2014/6/ 1

映画「罪の手ざわり」/ジャ・ジャンクー監督に聞く 中国社会に潜む暴力「正面から向き合うべきだ」

「私にとっての『抗い』は、映画を撮ることなんだ」

──(新人俳優の)ルオ・ランシャンの起用の理由と、キャリアの浅い俳優を演出する際に注意していることを教えてください。とは。

初めて会った時、彼は長沙の大学で演技を勉強していた。彼がどう演技するかより、私が彼を観察することが大事だと思った。彼の中から若者が持つ自我を引き出せればいいな、と思って起用した。彼を緊張させず、自然にせりふを言ってもらうよう気を付けた。

昔、溝口健二監督が俳優にこう言ったと聞いた。「あなたが相手に対して"反射"して下さい」と。「反射」という単語を聞いた時、「自分のことは忘れて、相手のことを聞け」と言っているんだな、と思った。相手があっての反応だ。一人芝居ではない。それを彼に言うことで、演技がうまくなるような気がした。

──監督は、特定の宗教は信じていないとおっしゃっていましたがいうが、原題の「天注定」の「天」は何を意味しているとお考えですかだと理解しているか。

中国語で「天注定」は微妙なニュアンスを持つ。一つは宿命。悲観的、消極的な意味だ。もう一つは「天に与えられたもの」。その言葉のもとに、自分の尊厳のため戦ったり、権力者に立ち向かったり、正義のために前進したり。そういう人たちのための言葉でもある。「水滸伝」の中にもそんな話が出てくる。

天は万物の神、大自然と言おうか。私はいつも言う。暴力で暴力を制するのはいけない。それは分かっている。ただ「天に与えられたもの」として、暴力ではあるかもしれないが、人が抗おうとする行為は尊重したい。私にとっての「抗い」は、映画を撮ることだ。


「罪の手ざわり」(2013年、中国)

監督:ジャ・ジャンクー(賈樟柯)
出演:チャオ・タオ(趙濤)、チァン・ウー(姜武)、ワン・バオチャン(王宝強)、ルオ・ランシャン(羅藍山)
2014年5月31日(土)、Bunkamura ル・シネマほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

3

人気キーワードHOT

特集SPECIAL

ランキング RANKING