地元ドイツではなく、一番遠い日本から始まる
それ以前にもメジャーな作品への出演依頼はあった。アーノルド・シュワルツェネッガー主演の「エンド・オブ・デイズ」(99)、アルフォンソ・キュアロン監督の「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」(04)、クライブ・オーウェン主演の「トゥモロー・ワールド」(06)。どれも役柄が納得できないなどの理由で断っていた。
「ウディ・アレンにもオファーされた。その時は『5日後に撮影に入るから』と無茶を言われ、無理だと」(笑)
決してメジャーな映画を拒否したわけではない。心の準備はできていた。「バチカンで逢いましょう」は、満を持してのカムバックといえるかもしれない。
「1本1本の映画にそれぞれが持つ運命があると思う。この映画は私をもう一度世界へ連れて行ってくれる。そんな運命を持った映画なのでしょうね」
今回宣伝で来日すると決まった時、脳裏に浮かんだことがある。ベルリン国際映画祭で上映された「シュガー・ベイビー」(84)を世界で最初に買い付けたのが、日本の配給会社だったこと。同作は日本を皮切りに世界中で上映されて大ヒットし、続く「バグダッド・カフェ」の大成功につながった。
「地元のドイツからではなく、一番遠い日本から始まったことに、神秘的な力を感じる。あの時はだめだったけれど、今回は来日できた。やはり私を世界に連れ出してくれる映画なのだと思いますね」
その運命的な映画で、ゼーゲブレヒトと運命的な出会いを果たすのが、イタリアの名優ジャンカルロ・ジャンニーニだ。ゼーゲブレヒト自身が共演を熱望したという。
「ジャンニーニさんはちょうどボンド映画(『007 慰めの報酬』)に出演中だったので、実現は難しいかもしれないと思った。でも彼も私のファンで『マリアンネ・ゼーゲブレヒトが出るならぜひ』と引き受けてくれた。尊敬していた彼と共演できてうれしかった」
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