2014/4/ 6

映画「罪の手ざわり」/ジャ・ジャンクー監督会見 "四つの事件"で切る中国 「映画は人の心つなぐ」

2013年の第66回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した中国映画「罪の手ざわり」のジャ・ジャンクー(賈樟柯)監督と出演女優のチャオ・タオ(趙濤)が4月2日、東京都内で記者会見した。中国で実際に起きた四つの事件をモチーフに、激変する社会のきしみをあぶり出す作品。ジャ監督の来日は「四川のうた」(08)以来5年ぶり。「映画は人と人の心をつなぐことができると思う」と語った。

すべてのエピソードに共通する「暴力」

中国の山西省、重慶市、湖北省、広東省で起きた殺人、強盗、自殺などの事件をもとに、四つのエピソードでつないで描く。登場するのはいずれも経済成長と社会変化の波にもまれ、もがきながら生きる人々。ジャ監督は「中国では経済が急速に成長したため、出稼ぎなどで人が絶えず動きながら生きている。移動が作品の大きな要素だ。初めて手持ちカメラを使い、漂泊感を出した。(作品で語られる)4つの個人の悲劇だが、観る人は自分のこととして受け止められるのではないか」と話した。

すべてのエピソードに共通するのが「暴力」の存在だ。ジャ監督は「中国の映画界では長年、暴力を語ることが許されなかった。だから語ってみたかった」と動機を説明。「貧富の差、精神的な貧困、孤独、人間の尊厳などに触れつつ、撮影をしながら暴力を理解していった。暴力はどこから来るのか。事件に対する法的な結論はさておき、別の方法でとらえたかった。人としての本質が表れるものだと感じた」と述べた。

さらに、カンヌ映画祭での受賞後、世界40か国以上で配給が決まったことに対し、インターネットの影響力の大きさを指摘。「世の中は変わり続けている。人と人のつながり方もネットの出現で変わった。私も(中国の短文投稿サイト)『微博(ウェイボー)』の力を利用した。映画は人々が共通の問題を意識できる手段。人と人の心をつなぐことができると思う」と話した。

また、中国の若い世代について「地方からの出稼ぎ者の場合、故郷を出る漂泊感がある。さらに都市では単純な労働力とみなされ、上を目指そうとしても抑えられる。二重の漂泊感で帰属意識を得られない。それが目に見えない、暴力的な何かを生むのではないか」と分析していた。


「罪の手ざわり」(2013年、中国)
監督:ジャ・ジャンクー(賈樟柯)
出演:チャオ・タオ(趙濤)、チァン・ウー(姜武)、ワン・バオチャン(王宝強)、ルオ・ランシャン(羅藍山)
2014年5月31日(土)、Bunkamuraル・シネマほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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