2013/9/10

映画「日本の悲劇」小林政広監督インタビュー/「音が主張する映画」を作るため、ワンカットで長回し撮影

録音部はとても面白がっていた。音に合わせて画を決めていくのだから

――カメラが回っている間、フレームから出ても俳優は芝居を続けている。それが音の動きで分かります。

閉塞感とその反対の臨場感を同時に出すため、ほとんどすべての音を現場で録音したんです。人物の出入りだけではなく、家がどんな構造なのか、どんな場所に建っているのか。画面で見せず音で表現しました。立地は葛飾区の堀切菖蒲園あたりに設定したんです。国道から少し引っ込んだ路地にある一軒家。近くに京成電車の踏切がある。かすかに踏切の音を入れてみたりした。

何台もマイクをセットして、(立体音響の)サラウンドで録音するのは大変な作業でした。でも録音部はとても面白がっていた。通常のように画(え)が決まってから、録音部がセッティングするのではなく、音のセッティングに合わせて画を決めていく。撮影部より前に録音部と打ち合わせしました。だから結果的に撮影は長回し、ワンカットのフィックスになった。

――モノクロの中に1箇所だけカラーのシーンがある。全体をカラーで撮影し、大部分をモノクロに転換したのですか。

そうです。最初からモノクロで撮るのか、それともカラーで撮ってモノクロにするのか。迷った末、カラーで撮ることにした。モノクロ処理すると決めていたので、全体的に露出をアンダー気味に設定しました。だから、カラーの部分を作る時は、かなり誇張して昔のテクニカラーみたいにはっきり色が出るよう、色彩を調整した。

カメラマンには「ウディ・アレンの『マンハッタン』(79)ではなく、『スターダスト・メモリー』(80)のように仕上げてくれと言った。つまり「日本の悲劇」は、モノクロ風カラー映画なんです。


「日本の悲劇」(2012年、日本)
監督:小林政広
出演:仲代達矢、北村一輝、大森暁美、寺島しのぶ
2013年8月31日、ユーロスペース、新宿武蔵野館ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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