2013/4/ 5

映画「ホーリー・モーターズ」/レオス・カラックス監督来日 13年ぶり長編「人生を、1日に凝縮した作品」

主人公のオスカーが、銀行家、物乞いの女、アコーディオン奏者などさまざまな人物に変身しながら、パリをリムジンで移動する――。「ポンヌフの恋人」(91)などで知られるフランス映画界の鬼才、レオス・カラックス監督の13年ぶり長編「ホーリー・モーターズ」。4月6日の公開を前に、カラックス監督は東京都内で記者会見し「1つの長い人生を、1日に凝縮した作品だ」と語った。

「自分自身であり続ける疲れ」と「新たな自分を作る欲求」

 

――「変身」をテーマにした理由は。

すぐ頭に浮かんだわけではありません。出発点に2つの感情がありました。1つは「自分自身であり続ける疲れ」、もう1つは「新たな自分を作り出す欲求」です。自分を作り変えることは難しく、勇気がいる。しかし一生同じ自分ではいられない。人は自分自身であり続けるため戦い、同時に疲れていく。自分を変えねばならないとも思っている。この2つが「変身」につながったのです。

 

――(「ポンヌフの恋人」に主演した)ドニ・ラヴァンとの久々の共同作業はいかがでしたか。

彼と出会ったのは20歳ぐらいのころ。同い年で背丈も同じなんだ。主演作を3本撮り、最後の「ポンヌフの恋人」から20年経ってるね。今回は海外で外国語による撮影を望んだけど、実現しなかった。でも、とにかく早く撮りたかった。だから、まずパリで撮る。低予算でビデオで撮る。ラッシュ(編集仕上げ用ポジフィルム)を撮影中は見ない。そして、ラヴァンを主演にする。なぜなら私が一番よく知っている俳優で、どんな要求も可能だから。でも、私生活では夕食を1度食べたくらいで、本当の意味で彼と話したことはないんだ。

 

――墓地の場面で、墓石に「こちらのウェブサイトをご覧下さい」とありましたね。その意味は?

映画の根底には、2つの感情がある。自分自身であり続ける疲れと、自分を新たに作り出す欲求で、描く際にSF世界を構想した。SFは「現実とは何か」と問える点が面白い。人は現実に耐えられるか。現実を経験し続けられるか。もし可能なら責任が伴う。ならば人は責任を取り続けられるか。墓石のくだりは、そんな問いに対する一種のジョークなんだ。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

[続き]「映画という島を離れて生きる自分は、想像できない」
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