2013/2/ 9

映画「故郷よ」/ミハル・ボガニム監督インタビュー
チェルノブイリ「描いたのは、住み慣れた土地を離れざるを得なかった人々」

1986年4月26日、チェルノブイリ原発事故が発生。2日後、近郊の街プリピャチに強制退去命令が下った。新婚のアーニャは、現場に向かったまま戻らない消防士の夫を残し、母とともに故郷の街を後にする――。立入禁止区域(ゾーン)内で撮影された初の劇映画「故郷よ」(2011年)。長編デビューを果たしたミハル・ボガニム監督は「事故そのものではなく、事故で住み慣れた土地を去らなければならない人々を描いた」と語った。

女優としてのカラを破った「ボンドガール」

「故郷よ」は"事故前後の4日間"と"10年後"の二部構成。第1部で花嫁だったアーニャは、第2部でゾーン内を見学するツアーガイドとして登場する。廃墟と化した巨大観覧車、学校、プール──。ボガニム監督も実際にツアーに参加し、製作を思い立ったという。

「ゾーンの中は事故が起きた当時のまま。時間が止まっていた。衝撃的な光景で、すぐ映画化すべきだと思った。ロケ撮影することもその時に決めました」

アーニャ役には「007 慰めの報酬」(2008)でボンドガールを演じたオルガ・キュリレンコを起用したが、懸念もあった。彼女にきらびやかなイメージを変える覚悟があるか。ゾーンでの撮影に同意してくれるか。だが本人に会った途端に不安は消えたという。

「キュリレンコは自分のカラを破り、イメージを変えることに強い意欲を示した。ゾーンでの撮影もいとわなかった。ためらわず起用しました」

第2部でアーニャは年をとり、被爆により体調が崩れていく様を描いているが、「原発事故で一人の女性がいかに変わるか。そこに焦点を当てて演じてもらった」という。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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