ある旅番組を見ていたときのこと。チェコを旅する番組で、かの国を代表する画家に話が及んでいた。チェコは何度か訪れたこともあり親しみもあったので、もちろん誰の話になるのか予測はつく。そう、日本にもファンが多いミュシャだ。繊細な女性の描写やガラスのランプで人気のミュシャは、高値で取り引きされている。我が家にもミュシャファンがおり、プリントされたノートやカレンダー、ハンカチなどいろいろとミュシャグッズがある。ところが、テレビで紹介されていたのはミュシャではなく『ムハ』だった。
えっ、別の作家?。しばらく頭が混乱する。調べてみると、ミュシャはフランス語の発音に習ったもので、チェコ語ではムハもしくはムッハのほうが発音に近いという。でも、ミュシャで通っていたものが急にムハになってしまうと、知っている人が改名したかのような違和感と、親しみがあったのに突然遠くにいってしまったような、知らない人のような感覚に陥った。
「ネスレ」には慣れたけど
これはミュシャに限ったことではない。外国の名前や名称は日本人に馴染みやすい、聞こえた形でまずは入ってくる。その後、現地の正しい発音に近い日本語に置き換えられる。
ここ最近、ヘぇと驚いたものと実際にどちらにするか悩んだものをあげてみたい。たとえば「ダジャース」。これも野茂選手が活躍していたころは、確かドジャーズだったはず。何年か前から新聞やテレビなどではダジャースの方を使うようになっている。今年になって倒産したというニュースが報道された際も「ドジャーズ」「ドジャース」「ダジャーズ」「ダジャース」など4通りもの言い方が登場していた。もうこうなったら多分あの球団のことだろうなと感覚で思うしかない。
その他にも「アランブラ」。これはアルハンブラ宮殿のアルハンブラがスペイン語ではHの発音をせず、アランブラの方が正しいので言い変えられている。ここ数年で、呼称を変更するようある局ではお達しがあった。では、名曲「アルハンブラの思い出」はどうなるのか。これはこのまま。コーヒーを代表する食品会社ネスレも、昔はネッスルと言っていたはず。英語読みでネッスルだったのを本社のあるスイスに合わせて、フランス語読みのネスレにしそうだ。調べてみると、まだまだいろいろとある。「ビン・ラディン」は「ビン・ラーディン」へ、「タリバン」は「ターリバン」など、ちょこちょこ言い方が変わってくる。
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