映画「最愛の子」のピーター・チャン監督に聞く/18万円で男子を"買う"ことがなんとも思われていない

最愛の子

(C)2014 We Pictures Ltd.

中国で多発する幼児誘拐事件を題材に、親子の愛を描く映画「最愛の子」が2016年1月16日に公開された。一人の子供の誘拐をめぐり、生みの親と育ての親が出会い、葛藤する物語。ピーター・チャン監督は「観客一人一人が心で対話できる映画を撮りたい」と語った。

中国広東省深セン市。3歳の男児が突然姿を消した。両親は警察に届け、ネットでも情報提供を呼びかけるが見つからない。3年後。遠く離れた中国北部の村で息子は発見されたものの、別の女性に育てられ、実の親を完全に忘れていた。生んだ両親と育てた女性。どちらにとっても「最愛の子」を間に子供も揺れ動く──。

ビッキー・チャオ出演までの紆余曲折

年間約20万人の子供が行方不明になる中国。原因として経済成長で拡大する都市と農村の格差、一人っ子政策による農村の人手不足などが指摘されている。チャン監督は深センで起きた実際の事件をフィクションに仕立てた。なぜ悲惨な事件が起きるのか。

「封建主義や男尊女卑、農村の人手不足。農村に男は欠かせない。女の子は嫁げば労働力は一人減るが、男なら嫁をもらえば一人増える。1万元(約18万円)で買えるなら男の子を買うことが、なんとも思われていない。その結果、年に20万人の子供が誘拐されている」

「映画では子を誘拐された夫婦も問題を抱えていた。彼らは経済発展である程度豊かになった中流の人々だ。よりより生活、チャンスを求め、(深センのような)大都会に出てきた。しかし、豊かになったことで結婚生活がぎくしゃくし、いい親でなくなる。その隙に子供が誘拐されてしまう」

香港映画界を代表する作り手で、最近は中国で大作を次々手掛けるチャン監督。文化の違う中国で作る難しさを今も感じている。今回はキャスティング段階から「香港との差」を感じたという。育ての親を熱演したビッキー・チャオも決定まで曲折があった。

「最初に打診した時は即答でOKだったが、脚本を読んで断ってきた。話を聞いたところ、部分的に納得できないというので調整した。俳優が役を引き受けるか断るか、理由はよく分からないことがある。私の推測だがテーマが幼児誘拐だったことも関連しているのだろう」

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東京フィルメックス事務局提供・撮影:吉田留美

[続き]子を思う親の気持ちが胸に迫り、涙を流さずにはいられない
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