鎌倉に住む三姉妹のもとに、15年前に家を出た父の訃報が届く。葬儀の席で三姉妹は、腹違いの妹すずと出会う。父を奪ったすずの母はすでに他界。義母を支える中学生のすずに、長女の幸は「鎌倉で一緒に暮らさない?」と声をかける──。
人気漫画家・吉田秋生の原作を、「そして父になる」(13)の是枝裕和が監督した。是枝監督は「誰も知らない」(04)で育児放棄を、「そして父になる」では子ども取り違え事件を取り上げた。今回は母親違いの4人が、本当の姉妹になるまでの1年間だ。
女性の嫌な面を粘着質な雰囲気で演じる大竹が生々しい
すず(広瀬すず)は山形から鎌倉へ越してくる。しっかり者の長女・幸(綾瀬はるか)、自由奔放な次女・佳乃(長澤まさみ)、マイペースな三女・千佳(夏帆)。すずは自分を「女子寮の下っ端」と位置付け、姉たちは見えない壁を優しく壊していく。何気ない会話を通し、距離が縮まる過程が丁寧に描かれる。父親に対する記憶は、三姉妹とすずでタイムラグがある。回想シーンは使わず、会話だけで父の情景を浮かばせる手法が秀逸だ。
それにしても是枝監督が描く母親像は屈折している。今回は大竹しのぶが身勝手な母親で、三姉妹を困らせ、幸と衝突する。女性の嫌な面を粘着質な雰囲気で演じる大竹が生々しい。是枝作品常連の樹木希林は、独特の存在感で場の空気をさらう。脇の風吹ジュン、リリー・フランキーにも物語を与え、存在を際立たせた演出が憎い。
舞台となる鎌倉の日本家屋。しらす料理、アジフライ、梅酒。料理や飲み物が小道具の域を超え、話にふくらみをもたせている。一見口当たりのいいドラマだが、是枝監督らしい洞察力により、静かな感動をもたらす深い作品に仕上がった。
「海街diary」(2015年、日本)
監督:是枝裕和
出演:綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、加瀬亮
2015年6月13日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。