1969年、米カリフォルニア州サンタモニカ。ジョン・フォーム(ウォード・ホートン)は、出産を控えた妻ミア(アナベル・ウォーリス)に人形をプレゼントする。だが、幸せは思わぬ事件で打ち砕かれる。隣人を惨殺したカルト信者の男女がミアに襲いかかったのだ。男は警官に射殺され、女はミアの人形を抱いて自殺する。その日を境に次々と奇妙な事が起こり始めた──。
「ソウ」(04)のジェームズ・ワンが監督した「死霊館」(13)。心霊研究者のウォーレン夫妻が扱った事件を基にしたホラー映画だ。作品で使われた「アナベル人形」は捨てても逃げても、どこまでもついてくる。実際に人形は今、博物館で厳重管理され、定期的に祈祷が行われているという。
信仰を持つ人々をあざ笑うかのように増長する悪魔
「アナベル 死霊館の人形」は「死霊館」の前日譚もしくは番外編だ。人形の誕生の秘密が描かれる。ワン監督の「デッド・サイレンス」(07)、「狼の死刑宣告」(07)などで撮影監督を務めてきたジョン・R・レオネッティがメガホンを取っている。
作品は実在のカルト集団「マンソン・ファミリー」と人形の関連性を匂わせる。ミアが見ているテレビでファミリーによる事件のニュースが流れ、直後に隣家の惨殺事件が発覚する。続いてカルト集団の男女がミアたちの家に押し入り、恐怖のアナベル人形が誕生する。
マンソン・ファミリーは69年、ロマン・ポランスキー監督の妊娠していた妻シャロン・テートを殺害したことで知られる。今回の作品にはポランスキー監督作「ローズマリーの赤ちゃん」(68)の影響を感じる。妊婦の殺害、怪奇現象を経ての引っ越し、悪魔がらみの奇妙な事件。テート殺害事件と「ローズマリーの赤ちゃん」の影が随所に表れる。
アナベル人形を持ったミアの視点から、妄想とも幻覚とも思える怪奇現象を、本格的な心理サスペンスとして描いていく。信仰を持つ人々をあざ笑うかのように増長する悪魔。ドラマ性に欠ける最近の見世物的ホラーと異なり、抑制された物語と衝撃的な恐怖演出がバランスの良い作品だ。
「アナベル 死霊館の人形」(2014年、米)
監督:ジョン・R・レオネッティ
出演:アナベル・ウォーリス、ウォード・ホートン、トニー・アメンドーラ、アルフレ・ウッダード、ケリー・オマリー
2015年2月28日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。