モナコ大公のレーニエ3世(ティム・ロス)との結婚から6年。1962年、グレース・ケリー(ニコール・キッドマン)は、いまだ宮殿のしきたりになじめなかった。公の場で政治に意見するのは「米国流」と皮肉られ、夫も「控えめに」と言う。ヒッチコック監督からハリウッド復帰を誘われ揺れていた時、国が最大の危機に直面する。フランスのドゴール大統領が重い課税を提案。のまなければ「モナコをフランス領にする」と声明を出したのだ──。
「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」は、グレース・ケリーの生涯のうち、モナコ公妃となった60年代に焦点を絞っている。ハリウッド女優から公妃となった苦悩と孤独。国存亡の危機を通じ、改めてグレース・ケリーの人となりを描く。監督は「エディット・ピアフ 愛の賛歌」(07)のオリビエ・ダアン。
どうしてもグレース・ケリーには見えず苦しい
車から道路を写した映像で映画は幕を開ける。女優引退作「上流階級」(56)のワンシーンだ。女優としてのラストカットは運転シーンで終わり、彼女自身の人生も82年、仏コート・ダジュールで起きた交通事故で幕を閉じた。因縁めいたものをほのめかす描写だ。
61年12月。公妃としてがんじがらめの生活に、グレースは深い孤独を感じていた。そこへ「ダイヤルMを廻せ!」(54)、「裏窓」(54)、「泥棒成金」(55)とたて続けにグレースを起用したヒッチコックから出演依頼が入る。次回作「マーニー」へのオファーだった。旧知の監督からの連絡に喜ぶグレースだったが、立場上出演交渉は難航する。ヒッチコックが彼女の大ファンだったことは、映画ファンにはよく知られている。
ド・ゴールの課税要求で、モナコは窮地に陥る。グレースは国を救うため、自ら書き上げた脚本で大芝居に打って出る。米国と欧州を巻き込み、国際政治の舞台で彼女が見せた演技とは──。監督が「伝記映画ではなく、史実に基づいた人間ドラマ」というだけに、当時の時代背景、グレースの生い立ちを知らないと理解が難しいかもしれない。
キッドマンは熱演だが、どうしてもグレース・ケリーには見えず苦しいところ。しかし、ハリウッド女優から公妃に上り詰めたシンデレラ・ストーリーは、女優としての彼女の作品、人柄を知るにはうってつけだろう。
「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」(2013年、仏)
監督:オリビエ・ダアン
出演:ニコール・キッドマン、ティム・ロス、フランク・ランジェラ、パス・ベガ、パーカー・ポージー
2014年10月18日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。