"夢と魔法の王国"の生みの親、ウォルト・ディズニー。代表作の一つ「メリー・ポピンズ」はいかにして生まれたのか。着想から製作まで20年もかかったのはなぜか。「ウォルト・ディズニーの約束」は、映画「メリー・ポピンズ」の誕生の裏側を描く人間ドラマだ。
1960年代初め。ディズニー(トム・ハンクス)は児童小説「メリー・ポピンズ」を映画化しようと、原作者のパメラ・リンドン・トラバース(エマ・トンプソン)と交渉していた。始まりは20年前にさかのぼる。娘たちの愛読書「メリー・ポピンズ」を「きっと映画にするよ」と約束したディズニー。パメラと交渉を始めたが、すぐには承諾を得られなかった。
時は過ぎて20年後。ロサンゼルスのディズニー本社をパメラがついに訪れる。著書の売れ行きが伸びず、映画化に同意せざるを得なくなったのだ。しかし、待ち受けたスタッフが説明するアイデアに、パメラはダメ出しばかり。音楽も気に入らない、アニメはダメ、しまいには「もう映画にはしたくない」。あまりの頑固さにディズニーも頭を抱えるが、パメラがある秘密を抱えていると知る。
パメラの幼い日の記憶。優しかった父との思い出。東の風に乗り、魔法の力を持つ乳母「メリー・ポピンズ」は誰なのか。父はどこへ行ったのか。パメラが物語に込めた思いとは──。
アカデミー常連のトム・ハンクスとエマ・トンプソンがタッグ
タイトルは「ウォルト・ディズニーの約束」だが、内容はずばり"メリー・ポピンズ誕生秘話"だ。劇中二つの物語が同時進行する。一つは現在。ディズニーとパメラのやり取り。もう一つは過去。少女時代のパメラと家族の物語だ。過去の記憶は現在のパメラの心を揺らし、不満はディズニーにぶつけられる。パメラが「メリー・ポピンズ」にこだわる理由は、ディズニーの粘り強い問いかけで徐々に分かってくる。
ディズニーにはハンクス、パメラにトンプソン。ともに2度のアカデミー賞受賞を経験し、がっぷり四つで盤石の演技を見せる。魔法で夢を見せるディズニーと、心温まる家族の物語を書いたパメラ。二人の共通項は、幼い日に封印した記憶にあった。光り輝く物語に、影がひっそりついている。人生の機微をさらりと、爽やかに見せる作品だ。
「ウォルト・ディズニーの約束」(2013年、米国)
監督:ジョン・リー・ハンコック
出演:トム・ハンクス、エマ・トンプソン、ポール・ジアマッティ、ジェイソン・シュワルツマン、ブラッドリー・ウィットフォード、コリン・ファレル
2014年3月21日(金・祝)、TOHO シネマズ シャンテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
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