「僕の子ども時代の秘密は、この作品にすべて表現されている。究極のラブストーリーに捧げる、僕なりのオマージュだ。高い理想を掲げた不可能な愛。心を惑わす壮大なラブストーリー。望むこと自体がおこがましい物語。もう一つのオマージュは、僕が監督になる以前、男にならなければならなかった時代に捧げられている」(グザビエ・ドラン監督)
女になった男と、その男を愛した女。「わたしはロランス」はドラン監督の言葉通り、狂おしく激しい愛の物語だ。
監督は、子役出身の24歳
カナダ・モントリオール。国語教師のロランス(メルビル・プポー)は、恋人のフレッド(スザンヌ・クレマン)に打ち明ける。「僕は女になりたい。体を間違えて生まれてきたんだ」。フレッドはロランスをなじるが、喪失を恐れ、最大の理解者として生きると決める。
化粧と女装を始めたロランスだったが、人々の好奇の目にさらされ、フレッドは精神的に追い込まれていく。耐え切れなくなり、二人は別離を選ぶ。しかし、それぞれ別のパートナーと暮らし始めるものの、互いを忘れられない。やがて再会。すべてを投げ出し、逃避行の旅へ出る。しかしまたしても、愛しているのにうまくいかない。二人は感情をぶつけ合い、もう共に生きていけないことを悟る──。
ドラン監督は子役出身の24歳。これまで監督作3本がすべてカンヌ国際映画祭に出品され、フランス映画界で"恐るべき才能"と注目を集めている。性同一性障害の男をめぐる物語「わたしはロランス」は、2時間48分、息苦しいまでの愛と激情が満ちた作品だ。
愛したいのに傷つけてしまう。近付きたいのに分かり合えない。ロランスとフレッドの愛は、一見個人的で特別に見えるが、永遠で普遍的な関係性への問いかけでもある。
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