2013/7/ 6

映画「選挙2」/3.11以降も変わらぬ政治と社会 ニッポンの選挙の膿も映し出す問題作

デビュー作「選挙」(2007)で日本の"ドブ板選挙"の実態に迫った想田和弘監督が、再び選挙戦にカメラを向けた。タイトルも、ずばり「選挙2」。前作では川崎市議会補欠選挙に自民党の落下傘候補として出馬し、見事初当選を果たした"山さん"こと山内和彦氏が、今度は無所属で同市議選に挑んだ。

選挙を制したのは、原発には触れずドブ板選挙を展開した政既成党の候補者

2011年4月1日に告示された統一地方選。東日本大震災の直後であるにもかかわらず、原発問題に触れようとしない候補者たち。"浪人中"の山さんは業を煮やし、怒りが高じて立候補した。スローガンは"脱原発"。放射能汚染が日本全体の問題であることは明白だった。「これで僕に入れない人はどうかしているよ」

ドブ板選挙とは縁を切り、"カネなし"、"看板なし"、"組織なし"の徒手空拳。ポスターは「選挙」のチラシを活用した。さゆり夫人の張り方が甘く、はがれかけたポスターを、画びょうで補強して回る山さん。郵便局では、シャッターが降りる寸前までハガキの宛名書き。そんな両親の脇で、ジュースが欲しいとむずかり、床に転がって泣きわめく長男の悠くん。孤軍奮闘する山内一家の姿は、いかにも頼りなげではあるが、「選挙」の時のような哀れさはなく、充実感がみなぎる。

投票日前日、防護服とガスマスクを着用し、最初で最後の街頭演説をする山さん。場所は予定していた駅前ではなく、人通りの少ない駅裏だ。足を止める人はほとんどいない。それでも山さんは脱原発を訴え、声を張り上げる。

残念ながら山さんの真摯な呼びかけが有権者を動かすことはなく、結果は落選。"ドン・キホーテ"の果敢なる挑戦は、惨敗に終わった。選挙を制したのは、原発問題には触れず、相も変わらぬドブ板選挙を展開した既成政党の候補者たちだった。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

[続き]感情的な言葉で圧力をかけてくる女性運動員とのやりとりは爆笑必至
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