デビュー作「選挙」(2007)で日本の"ドブ板選挙"の実態に迫った想田和弘監督が、再び選挙戦にカメラを向けた。タイトルも、ずばり「選挙2」。前作では川崎市議会補欠選挙に自民党の落下傘候補として出馬し、見事初当選を果たした"山さん"こと山内和彦氏が、今度は無所属で同市議選に挑んだ。
選挙を制したのは、原発には触れずドブ板選挙を展開した政既成党の候補者
2011年4月1日に告示された統一地方選。東日本大震災の直後であるにもかかわらず、原発問題に触れようとしない候補者たち。"浪人中"の山さんは業を煮やし、怒りが高じて立候補した。スローガンは"脱原発"。放射能汚染が日本全体の問題であることは明白だった。「これで僕に入れない人はどうかしているよ」
ドブ板選挙とは縁を切り、"カネなし"、"看板なし"、"組織なし"の徒手空拳。ポスターは「選挙」のチラシを活用した。さゆり夫人の張り方が甘く、はがれかけたポスターを、画びょうで補強して回る山さん。郵便局では、シャッターが降りる寸前までハガキの宛名書き。そんな両親の脇で、ジュースが欲しいとむずかり、床に転がって泣きわめく長男の悠くん。孤軍奮闘する山内一家の姿は、いかにも頼りなげではあるが、「選挙」の時のような哀れさはなく、充実感がみなぎる。
投票日前日、防護服とガスマスクを着用し、最初で最後の街頭演説をする山さん。場所は予定していた駅前ではなく、人通りの少ない駅裏だ。足を止める人はほとんどいない。それでも山さんは脱原発を訴え、声を張り上げる。
残念ながら山さんの真摯な呼びかけが有権者を動かすことはなく、結果は落選。"ドン・キホーテ"の果敢なる挑戦は、惨敗に終わった。選挙を制したのは、原発問題には触れず、相も変わらぬドブ板選挙を展開した既成政党の候補者たちだった。
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