感情的な言葉で圧力をかけてくる女性運動員とのやりとりは爆笑必至
だが、それは最初から予想できたことではある。この映画が描いたのは、山さんの奮戦と敗北ではない。あれだけの大事故が起きても変わらぬ政治と社会、動こうとしない市民に対する、想田監督の驚きと憤りである。
一番面白かった場面は、演説中の保守系議員にカメラを向けた想田監督と議員との衝突だ。2人の議員を相手に繰り広げられる小競り合いこそ、この映画の圧巻と言ってよい。
2人は「選挙」にも出ている。その時の撮られ方がよほど気に障ったのか、撮影にストップをかけてくる。だが、想田監督はひるまない。表現の自由を盾に撮影を強行。いつもはカメラの後ろに隠れている想田監督が激しく論戦し、自らの存在を露わにする。デビュー以来、基本的には"観察者"に徹してきた想田監督が、思い切りルールを破っている。感情的な言葉で圧力をかけてくる女性運動員との噛み合わないやりとりは爆笑必至だ。
変わらない日本。変えにくくさせている選挙制度。その中で必死に変えようと頑張っている人々。変えてはならぬと踏ん張る人々。市議選を戦う一人の男を追うことで、今日の日本の社会状況を鮮やかに浮かび上がらせる。
「選挙2」(2013年、日本・米国)
監督:想田和弘
2013年7月6日、シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。