引退した音楽家が再び集い、人生賛歌を奏でる「カルテット!人生のオペラハウス」のダスティン・ホフマン監督が2013年4月9日、東京都内で記者会見した。21年ぶりの来日に初監督作品を携えたホフマン監督は「老いたら人生が終わるわけではない。悩みを抱えながらベストを尽くす。それがこの映画の精神だ」と語った。
人生の終盤を迎えた音楽家たちが、住まいの老人ホーム存続に向け、コンサートに向け再集結する「カルテット!」。マギー・スミス、トム・コートリーら名優に加え、プロの音楽家たちもキャストで参加。オペラやクラシックの名曲をふんだんに盛り込み、人生の素晴らしさを歌い上げる人間ドラマとなっている。
「ずっと監督がやりたかった。妻に背中を押されて」
──なぜ今、監督業に取り組んだのでしょうか。
長く監督をやりたかったが、タイミングが合わなかった。いい脚本があっても、資金調達が難しかったり、「飛び込み台の端まで行って飛び込めない」ことが多かったんだ。「カルテット!」の脚本は素晴らしく、共感できる題材だった。36年連れ添った妻に「あなた75歳じゃない。今やらずにいつやるの。監督しないなら別れるわ」と背中を押されて。私も「じゃあ、ヒットしなかったら僕から別れるよ」と言ったんだよ(笑)。
──映画や音楽に詳しくない人も楽しめるようになっていますね。撮影にあたって工夫したところは?
いい質問だね。「カルテット!」は人生を描いた映画だ。今20~30代の人は、年をとることについて考えず毎日過ごしていると思う。でも、人はある日目覚めた時、年をとったことに気付くんだ。目も足も痛くなり、目も見えにくくなってくる。
主演のマギー・スミスはいつも体に痛みを感じ、杖をつき、目が悪いので照明に気を使わなければならなかった。「自分もいつかはそうなるんだ」と、観客にも気付いてほしいと思う。
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