結成12年、30歳目前のお笑いコンビ"房総スイマーズ"。長い付き合いで会話も減った田中(伊藤淳史)と甲本(小出恵介)は、現状打破に向け交換日記をつけ始める。甲本は「ネタ作りにうってつけ」とやる気満々だが、田中は「時代遅れ」と乗ってこない──。放送作家・鈴木おさむの原作「芸人交換日記 イエローハーツの物語」を、お笑いコンビ"ウッチャンナンチャン"の内村光良が脚本化、監督した。
題材が監督に近すぎて「熱さ」が過剰になった感も
インターネットの電子メールからSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)など、さまざまな交流手段が普及した現代。時代錯誤な小道具・交換日記を映像でどう表現するかが鍵になる。まずノートの文章が画面に映り、書いた本人が文を読む。物語が進んで日記が2人の生活に溶け込んだ後は、会話の間に日記の文をモノローグ風に挿入。さらに文章を字幕で表示するなど、手の込んだ演出だ。
もう一つのポイントは、監督自身がお笑い芸人であること。原作者の鈴木ともども、業界の酸いも甘いも知り尽くしている。だからこそ、芸人の生きざまと裏をリアルに熱く描けるのだ。劇中披露される"房総スイマーズ"のコントは、内村自身がネタを書いたという。
一方で、青春のすべてを笑いに捧げた話だけに、題材が監督に近すぎて熱さが過剰になった感は否めない。2人それぞれの恋愛も描かれるが、展開が唐突過ぎて違和感を覚え、演出は全体にあざとさが付きまとう。コンビが壁にぶち当たり、人生の岐路に立たされ、解散を選択するあたりから作品は持ち直す。決断の秘密が日記で明らかになるくだりは、伊藤と小出の熱演で盛り上がる。
内村にとっては「ピーナッツ」(06)に続く監督2作目。前作はバラエティー番組の延長で作られたが、今回は演出と脚本に集中。出演者もプロの俳優で固めた。まだ稚拙な面はあるが、北野武監督の成功例があるように、場数を踏むことで新たな段階が見えてくるはずだ。次回作に期待したい。
「ボクたちの交換日記」(2013年、日本)
監督:内村光良
出演:伊藤淳史、小出恵介、長澤まさみ、木村文乃、川口春奈
3月23日、全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。