『夫がわたしを忘れる日まで』吉田いらこ 著(KADOKAWA)
ある日突然、45歳の夫が「若年性認知症」と診断された――。
漫画家・イラストレーターの吉田いらこさんの『夫がわたしを忘れる日まで』(KADOKAWA)は、「若年性認知症」と向き合う家族の3年間を描いた闘病セミフィクションです。「若年性認知症」という病は、症状が進むと、時間や場所、そして家族であっても人を認識できなくなるといいます。大好きだった夫が別人になっていく。そのとき妻はどう向き合うのか。
夫に異変が。念のための検査だった。
佐藤家は、事務職で時短勤務している妻・彩(43歳)、広告会社に勤務する夫・翔太(45歳)、息子・陽翔(10歳)の3人家族。夫婦仲も良好で、穏やかな「普通」の日常を過ごしていました。
ところが、あるときから翔太に異変が......。もともと几帳面な性格で、記憶力もいいほうだったのが、陽翔との約束を忘れたり、仕事中に自分の名前がとっさに出なかったり、これまでにないミスを連発するようになったのです。
彩は違和感を覚えながらも、「疲れがたまってるんじゃない?」「気にしすぎかも」と事態を楽観視していました。
そんなある日、決定的な出来事が起こります。翔太は陽翔と一緒に映画館に来ていることを忘れ、陽翔を置いてひとりで先に帰ってしまったのです。
これはもう、ただの疲れではなく、翔太の中で何かが起こっているのかもしれない。念のため、病院で診てもらうことにしました。そして検査の結果、「若年性認知症」と診断されたのです。