【辛酸なめ子の東京アラカルト#72】日比谷に誕生したヴェルサイユ空間で、アッパーなティータイム
マリー・アントワネットゆかりのアロマの紅茶で品格アップ
席に案内されると、そちらもまた赤い椅子が並んでいてゴージャスでした。白いレースのカーテンと合わせると、どこか昭和っぽいエモさも漂います。窓が大きく解放感あふれる明るい空間なので、昭和のクラブではなく、ヴェルサイユっぽく見えます。

レースと赤い椅子が優雅でゴージャス。窓の外には日比谷公園が広がっています。だんだんリュクサンブール公園に見えてきます。
メニューには、「ニナス パリ」の沿革についての説明が。前身は1672年にマルセイユで創立された香料メーカーで、香水の原料となるローズ、ラベンダー、ジャスミンなどのアロマをヴェルサイユ宮殿に納めていて、マリー・アントワネットにもアロマを献上した実績があるとか。その後、世界ではじめて紅茶にローズをフレーバーとして使用。フランスだから勝手にマリー・アントワネットの名前を掲げているのかと思ったら、実際にアロマを献上していたとは。

ニナスオリジナル マリー・アントワネット ティーは、ヴェルサイユ「王の菜園」で育まれた、希少なりんごとバラの花びらで香りづけされていて、上品なテイスト。)
せっかくなので「オリジナル マリー・アントワネット ティー」をオーダー。「ヴェルサイユにある王妃の秘密の庭で栽培されたりんごとバラのアロマを厳選したセイロン茶葉に香りづけした世界で唯一のフレーバードティー」だそうです。王妃が栽培していたりんごやバラの子孫のフレーバーかもしれないと思うと、味の深みさがさらに増したようです。ポットで920円というのも安く感じられます。他のメニューも「ヴェルサイユローズ」とか「ジョゼフィーヌボナパルト」とか優雅な感じでした。

魅惑的なスイーツが並んでいるケース。ケーキには適度なボリューム感があります。
ヴァンドームティー&スコーンセットやパスタセット、ガレットセットなど、軽食メニューもあります。もちろんスイーツも充実。京都宇治抹茶シフォン、塩キャラメルロール、ミルフィーユ、和栗と洋栗のモンブラン、バスクチーズケーキ、ストロベリーショートケーキなど、ドリンクとセットにすると1500円前後です。「パンがないならお菓子を食べれば......」というセリフがよぎり、ランチ代わりにケーキを食べたい衝動に。

ケーキの中から1種類だけ選べないときは、選べるハーフケーキ2種+ドリンク1杯+ミニソフトクリームで2200円のセットもおすすめです。
隣の席には、ドレッシーなブラウスとスカート姿のマダムのグループが。「今日のコーデは完璧!」と自己肯定感を高めていました。マリー・アントワネットのスピリットを感じる空間なので、自然と姿勢が正され、優雅な所作になります。その女性たちは、レースのハンカチを膝に乗せたりしていてノーブル感が漂っていました。フランス貴族のヴァイブスをまとえるティーサロン。少し品格も高まった気がします。日常生活に戻っても、しばらくその余韻が続くと良いのですが......。
辛酸なめ子
東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著に、『ヌルラン』(太田出版)、『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後』(PHP研究所)『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)『愛すべき音大生の生態』(PHP研究所)などがある。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。