【辛酸なめ子の東京アラカルト#66】ファスナー意識が高まる秋葉原の穴場施設
日本の技術への夢や希望が渦巻く最先端ファスナー
そんな日本の技術の粋を集めた各種ファスナーの説明が。「水も空気も通さないファスナー」は特殊なエレメント構造で、宇宙服やダイビングスーツにも使われているそうです。
横に展示もされていましたが「展示物には、触れないようお願い致します」という貼り紙が。たしかに皆開け閉めしたくなって壊れる恐れがあります。

(様々な需要に合わせて発展しているファスナー。ファッションのアクセントに)
他にも、防寒服などに使われている「水をはじくファスナー」、ロケットや消防服に使われている「燃えにくいファスナー、漁網に使われている、サビないYKK 最大サイズの樹脂射出ファスナー」など、ファスナーはあるゆるシーンで人類をサポート。
スライダーを一番上まで上げると簡単に開く、寝袋などに使われている「トップオープン」という形式のファスナーや、体の不自由な人でも操作しやすい簡単に操作できるファスナーも。人のニーズに合わせて多種多様なファスナーがあります。
ちなみにYKKという名称は、創業者の名前を取って「吉田工業株式会社」の略だとか。吉田氏は「お客さんに喜んでもらって社会に貢献しないと会社は大きくならない」という崇高な意識の持ち主だったそうです。

(ペットボトルから再生されたファスナー。再生ポリエステルがこんな形に変身するとは驚きです)
以前から環境問題に取り組んでいて、3階にはリサイクルのファスナーについてや、有害物質を排出しない製作過程などについての展示がありました。SDGsもバッチリです。
ファスナーはたくさん展示されていましたが、自分で触って開閉できなかったのでフラストレーションが。1階では、随時ものづくり体験ができるようになっていました。「プチファスナーポーチ」「ネックストラップ」「流れ星の3本ファスナーポーチ」などファスナーを使ったものが多く1000円以下でリーズナブル。
500円の「ファスナーストラップ」作りに挑戦。1階のスタッフの方が丁寧に説明してくださいます。

(右のパーツを左の上部に付けて一瞬で完成した「ファスナーストラップ」。色合いがかわいいです)
といっても、接着剤を塗布してパーツをはめ込む、これだけで瞬時にできました。あとは乾けば完成です。
ストラップで持ち運べるファスナーなので、いつでも自由に開閉し放題です。寸止めだったファスナーへの欲求から、ファスナーストラップを作ってしまったようです。ファスナーへの飢餓感が刺激され、ファスナーを使いたくなる施設です。
「ものづくり館 by YKK」は展示は無料で体験費用もリーズナブル。財布のファスナーは固く閉じられたままでも充実感がありました。
辛酸なめ子
東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。武蔵野美術大学短期大学部デ ザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著に、『ヌルラン』(太田出版)、『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後』(PHP研究所)『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)『愛すべき音大生の生態』(PHP研究所)などがある。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。