「ガリガリ君」が40周年に向け新フレーバーを開発! 担当者と問題作「ナポリタン味」を振り返る。
(赤城乳業 マーケティング部係長 岡本秀幸さん)
これまでに4万5000個以上ものアイスを食べ続けてきたアイスジャーナリストのシズリーナこと荒井健治です。
スーパーやコンビニへお買い物のついでに立ち寄るアイスクリームのコーナー。アイスケースには、清涼感を感じるパッケージにいがぐり頭で白い歯が綺麗に生えそろった少年が印刷された「ガリガリ君ソーダ味」――。自分が1歳1か月の頃から食べていたおなじみのアイスであり、大人になった今でも食べ続けている馴染みの深いアイスです。
そんなガリガリ君が2021年に40周年を迎えるとのことで、特別企画と題して、SNSを中心に "70円ガリガリ君"の新フレーバーを一般募集しています(~10月15日)。40周年にはいったいどんなフレーバーが誕生するのか。筆者としては、年間4億本超えを売り上げる国民的アイスであるガリガリ君の今後の動向が気になりすぎてしまい、赤城乳業のガリガリ君担当者へ取材してきました。
コンポタ味は「駄菓子屋」がヒントに
さっそく、ガリガリ君担当歴7年の岡本秀幸さんにお話を聞いていきます。
Q ガリガリ君の40周年記念の味をSNSで募集しようと思った背景を教えてください。
「ガリガリ君の美味しさはもちろんのこと、わいわいみんなで楽しむことができるコミュニケーションツールでもあると考えています。今回のキャンペーンを通じて皆さんにガリガリ君の新味を考えていただくことで、一緒に商品開発を行っているような気持ちになり、周囲の方々とわいわい盛り上がってもらいたい。そして、ガリガリ君の新商品が発売するのをこれからも楽しみにしてもらいたい、と思ったのがきっかけです」
Q 岡本さんが新味を考えるときに大切にされていることはなんですか?
「そうですね。お客様の想像・期待を常に超えていくことではないでしょうか」
Q 個人的にですが、「ナポリタン味」がとても衝撃的で、こちらの想像と期待を一気に越えていったことが記憶に新しいのですが......。確か、2014年3月に発売された「ナポリタン味」は3億円の赤字を出してしまったんですよね。そのときの赤城乳業の社内はどんな空気だったんですか?
「......。コンポタ、シチューとある程度販売が好調でしたので、冷静な判断ができなかったのかと思います。当時、ナポリタンブームがありましたので、そちらにのってみました。『美味しくない」『こんなもの出すな』っていうお客様の声がすごかったです。あの時はなぜかナポリタン風味というより、ナポリタン味の再現にこだわっちゃって。鶏肉のエキスをいれて旨味を出したり、ピーマンの香りを入れたり、かなり工夫したんですが、はっきり言って失敗でした。赤字については、皆が冷静になった瞬間だったと思います」
Q お客様の声はしっかりと担当者に届いているんですね!
「はい。しっかりと目を通しております。チャレンジ商品の開発のきっかけは、お客様からの声でした。おかげさまで、ガリガリ君の販売は好調に伸びておりました。安定供給を使命として生産・販売に取り組んでいたので、"奇抜すぎてどのくらい売れるか予想がつかない"という商品よりも、"ある程度お客様に受け入れてもらえるのではないか"という商品が増えておりました。そんなとき、『ガリガリ君には新しいことに期待している。守ってほしくない』といった声がお客様から届きました。期待に応えたい。そんな想いで、チャレンジ商品の開発に取り組みました。コンポタージュ味は開発の途中段階からどうしても自分の大好きな味を世の中に出したいと思い、戦略的に社内営業を取ったりしましたが(笑)」
Q そこまでコンポタージュ味に情熱を注げたのは、どうしてですか?
「ガリガリ君の『皆でわいわい盛り上がる』というシーンと1番マッチしているなと感じたのが、駄菓子屋です。駄菓子屋のお菓子を調査すると、コーンポタージュの商品が人気だったことや、温かい飲み物を冷たく食べるという発想も斬新に思えたんです。だからこそチャレンジしたいとその当時は思いました」
Q なるほど。では、新味の募集で何か求めていることはありますか?
「70円のガリガリ君は、『大人』や『リッチ』シリーズよりも商品組成としてはシンプルなため、アイデアの幅を自分たちで狭めてしまっているかもしれません。"こんな味を求めている"というのではなく、お客様がどんなガリガリ君を期待しているのか、ありのままを知りたいと思っています。とにかくたくさんのご意見を参考にさせていただきたいです!」
赤城乳業の失敗を恐れず常に前を向き続ける勇ましい姿勢に色々と気づかされました。岡本さん、ありがとうございました! ファンの声で決まる新フレーバーも楽しみにしています!
シズリーナ(荒井健治)
アイス評論家兼イートデザイナー。これまでに4万5000個以上ものアイスを食べ歩く。TV、ラジオなどメディア出演多数。市販アイスのアレンジレシピや企業同士の商品コラボも手がける。
【Twitter】@sizzleeena/【Instagram】sizzle_feeling426
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。