2016/2/21

映画「不屈の男 アンブロークン」/大森収容所に待っていたのは、残虐な署長・渡辺

アンジェリーナ・ジョリーの監督第2作「不屈の男 アンブロークン」。不幸にも「反日映画」のレッテルを張られ、公開までに曲折を経た作品だ。しかし実際にはタイトルが示す通り、苦難を乗り越え生き抜く男を、正面から描いた人間ドラマである。

私はたとえ非常に残酷な人物を演じることになっても、試練に立ち向かうことにした

1936年、ベルリン五輪。米国でイタリア移民の子として育ったルイ・ザンペリーニ(ジャック・オコンネル)は、努力と才能で大活躍。一躍時の人となる。6年後の42年。第二次世界大戦のさなか、ルイは米空軍の爆撃手として太平洋上にいた。敵機に撃墜され、食料も水もないまま、海上を47日間漂流。日本軍に見つかり、捕虜となって移送される。

日本軍の収容所で、ルイら捕虜は尋問、暴力、監禁と理不尽な扱いを受ける。「死をまぬがれない」と覚悟したころ、東京・大森収容所へ移送。そこにはさらに残虐な署長・渡辺(MIYAVI)が待っていた。陰湿で残虐な渡辺は「私と同じで意志が強い」とルイに目を付け、執拗にからみ、暴力を振るう。ルイは兄の言葉「自分からくじけるな」を思い出し、苦しみを乗り越えていく。

44年末。空襲された東京を見ながら、捕虜たちは終戦が近いと感じていた。しかし、またもや大森からの移送が決まる。運ばれた先は新潟・直江津収容所。あろうことか渡辺も同じ収容所におり、再びルイたちを心身ともに追い詰める。このまま日本で露と消えるのか。いつか故郷へ帰れる日は来るのか──。

ルイの半生をつづったローラ・ヒレンブランドの著書「アンブロークン」(10)が原作。ルイはその後帰国し、98年長野五輪に聖火ランナーとして参加する。物語に通底するのは怨念でも復讐でもない。許しだ。渡辺を演じたMIYAVIの言葉が、それを如実に表している。

「アンジーと話して、彼女が許しについての映画、対立する国と文化の架け橋を作ろうとしていると分かりました。それは異なる文化の理解に貢献するでしょう。私はたとえ非常に残酷な人物を演じることになっても、試練に立ち向かうことにしたのです」


「不屈の男 アンブロークン」(2014年、米国)

監督:アンジェリーナ・ジョリー
出演:ジャック・オコンネル、MIYAVI、ドーナル・グリーソン、ギャレット・ヘドランド、フィン・ウィットロック
2016年2月6日(土)、全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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