いつからこんなにとりつかれているんだろう、テレビに。「おはよう」の前にテレビをつけ、「おやすみ」の後にテレビを消す。1日何時間見ているんだろうかというぐらい、テレビ、テレビ、テレビ。もちろんこんな仕事してるんだから、それでいいのだが、それにしてもテレビ画面を見ていない時間の方が少ない気がする。
職場にだって、目のつくところにたいていテレビが壁にくっついている。無音でついているテレビがいろいろな映像を映し出す。これだけ番組が多いのに、見たいものがないジレンマは常にあり、ケーブルテレビだけでは飽き足らず、動画配信も契約。いったい今度はいつ見る時間があるのだという矛盾を楽しみながら、テレビから離れられない。
テレビ断ちして読書三昧
そんなテレビライフから離れていく人も多い。ネットさえあれば十分だと自宅にテレビがない20代、30代が筆者の周りにもけっこういる。久しぶりに会った友人も、つい最近テレビ断ちデビューを果たしたという。きっかけは離婚による独り暮らし。要は生活を見直したかったんだろうが、思わず聞いてしまった。「テレビがなくて、寂しくないの」
お笑いもドラマもドキュメンタリーも大好きのテレビっ子だった彼女のことだ。一人になったばかりで、テレビを見ながら笑ったり愚痴を言ったりでもしないと時間が埋まらないんじゃなかろうか、孤独に耐えられないんじゃないかと思ったのだ。
「んなもん、テレビあったら大変だよ!1日寝っ転がってテレビ見て終わっちゃうよ。絶対そうなっちゃうと思ってやめたの」
たしかにそれは想像できる。しかし、もう1つ彼女には理由があった。「わたし、まだ36歳だけど、人生をかけてずっと読んでいきたいと思う本が山ほどあるの。今回引っ越すことで、テレビのかわりに本を持ってきたの。この本たちをゆっくり読んでいこうと決めたんだ」
人生をかけて読みたい本に時間を費やす。まるで松岡正剛さんのようなことをやろうとしている彼女は、なんだか立派に見えた。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。