恋も仕事も流されっぱなし、買った植物さえ枯らしてしまう梅宮志乃(多部未華子)。横暴な恋人の正樹(柄本佑)に従ってきたが、同僚との浮気がばれて振られてしまう。心機一転、木造ぼろアパートに越した夜、庭で隣人の京志郎(綾野剛)に会う──。
ジョージ朝倉の同名人気漫画の映画化で、田口トモロヲ監督の3作目。全5巻のエピソードをコンパクトにまとめ、テンポよく仕上げている。志乃の独白が多用される一方、元カレ・正樹が幻として現れ嫌味を言う。言葉の端々に志乃の恋愛トラウマが見える。そこへ現れた京志郎。出会いのシーンは漫画を忠実に映像化し、ユニークな演出で観客の心をつかむ。
舞台は高円寺、阿佐ヶ谷、しもきた...
志乃役の多部は現在26歳。一皮むけた大人の女性を体当たりで演じている。相手に売れっ子の綾野。「そこのみにて光り輝く」(14)では心に傷持つ男、実写版「ルパン三世」(14)では石川五ェ門。今が旬の俳優だ。今回は女好きで気のいいビデオ店長を、ひょうひょうと演じている。ほか松坂桃李、菅田将暉、光宗薫、木村文乃と若手が顔をそろえた。
ロケ地も心憎い。アパートとビデオ店がある高円寺。志乃がかかわる小劇団が公演する阿佐ケ谷、下北沢。サブカルシャーが盛んな中央線沿線など、ロケ地が作品にリアルな空気を与えている。
さりげなく活躍するのが植物だ。愛に満たされた時は青々と茂り、関係が悪くなると枯れてしまう。恋愛バロメーターの役割を果たしている。くっついては離れる男女の物語は、時につやめき、時に滑稽で、時に赤裸々。監督の視線はユニークで柔らかく、幸せに満ちた作品になった。
「ピース オブ ケイク」(2015年、日本)
監督:田口トモロヲ
出演:多部未華子、綾野剛、松坂桃李、木村文乃、光宗薫
2015年9月5日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。