アジア圏の映画を広く紹介する「第10回大阪アジアン映画祭」が3月15日に閉幕した。コンペティション部門は「コードネームは孫中山」(台湾、易智言=イー・ツーイェン監督)がグランプリと観客賞の2冠を獲得。閉幕作品は韓国で昨年末に公開され大ヒットした「国際市場で逢いましょう」で、ユン・ジェギュン監督が舞台あいさつした。
台湾社会の貧富の差を描く
12作品で争われたコンペティション部門で、最も高い評価を受けた作品は「コードネームは孫中山」だった。パン・ホーチョン(彭浩翔)審査委員長は「シンプルなせりふ回しと細やかな表現方法で、若手俳優たちの自然な演技を存分に引き出した」と、監督の演出力に賛辞を送った。
アジア映画の未来を担う人材に贈られる「来るべき才能賞」は、「アイ・ファイン、サンキュー、ラフ?・ユー」(タイ)のメート・タラートン監督。「セーラ」(香港)の主演女優、シャーリーン・チョイ(蔡卓妍)が「アイドル歌手から実力派女優への脱皮を果たした」としてスペシャル・メンションを受賞した。
「コードネームは孫中山」は、学級費が納められない貧しい高校生のグループが学校の倉庫にある孫文の銅像を持ち出し、スクラップ屋に売りさばこうとするストーリー。未来を変えていこうとする若者たちの青春映画で、貧富の差など台湾社会の一側面も垣間見せる。
易監督によると、孫文の銅像を登場させたことにはいくつかの意味がある。まず、台湾の紙幣に肖像画が描かれていることから、金を象徴する存在としての意味。さらに革命家・孫文のイメージを、少年たちが目覚めていく革命精神に重ね合わせたという。
易監督の長編映画はチェン・ボーリン(陳柏霖)、グイ・ルンメイ(桂綸?)のデビュー作「藍色夏恋」(02)以来12年ぶり。「孫中山」主演のジャン・ファイユン(詹懷雲)、ウェイ・ハンディン(魏漢鼎)は監督が街角でスカウトした演技経験のない少年。彼らの等身大の演技も評価された。台湾では中華圏を代表する映画賞「金馬奨」と台北映画祭でそれぞれ脚本賞を受賞。反復と省略を効果的に取りれ、簡潔ながら奥行きを持たせた脚本が高く評価されている。
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