大ヒットミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール』が日本初演から30年目を迎えた今年、再び上演されることになりました。
1973年にフランスで初演されたジャン・ポワレ作の戯曲がベースとなった本作は、ストレートプレイとしてフランス演劇史上最長ロングランを記録。1978年にはフランス・イタリア合作で映画化され日本でも(邦題『Mr.レディ Mr.マダム』)話題となりました。
ミュージカル版は、アーサー・ローレンツ演出、スコット・サーモン振付によって1983年にブロードウェイで初演され大ヒット、翌年のトニー賞では作品賞を含む6部門を受賞しました。さらに、ブロードウェイでは2004年と2010年に新演出でリバイバルされ、どちらもトニー賞リバイバル作品賞を受賞しました。
上演の度に作品賞をとるという前例のない快挙を成し遂げている作品なのです。
愛があれば性別何て......異色の"愛"で大笑い!
ゲイクラブの経営者ジョルジュと、看板スターのザザ(もちろん2人とも男性)は20年同棲中です。ジョルジュには最愛の息子ジャンがいて、ザザが母親がわりとなり、手塩にかけて育ててきました。
しかし、そのジャンが、突然結婚を宣言したことからひと騒動がまきおこります。相手は、保守的で知られる政治家ダンドン議員の娘アンヌ。彼女の両親がジョルジュに会いに来るというので、ジョルジュは、既に離婚しているジャンの母親を呼んでその場をとりつくろおうとします。ところが、ジャンの母親が急に来られなくなってしまいました。
ザザは、ついに女装して母親になることを決意、馴染みのジャクリーヌの店で会うことにしてダンドン夫妻の前に悠然と現れます。これでハッピーエンドと思いきや、いつもの癖でカツラを取ってしまったのです。絶体絶命の危機! 果たして結末は......。
この作品の宣伝ビジュアルには華やかなゲイクラブのシーンを使うことが多くなっています。私もこの作品を観る前は、ゲイの夫婦が主人公の単なるコメディ作品だと思っていました。実際、幕が開くと爆笑また爆笑の渦。ところが徐々に愛の尊さ、温かさが描かれていき、最後は感動で涙が止まらなくなります。
実は、男二人で大切に育てた息子との深い家族愛の物語だったのです。私にとっては何度でも観たい大好きな一作です。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。