このところ女性誌で「シンプルでノーブルな暮らしをしましょ」というような特集記事を数多く見かける。なにも有名な作家の高価な器を使うとか、ハイファッションとはまた次元の違う、現代版の民藝に通じる世界観だ。いってみれば、審美眼を持ち、物を大切にする心を養い、豊かな気持ちで過ごすといったようなことである。
品質、流行ともに2年後には着られなくなるファストファッション、ポップで色鮮やかなインテリアグッズ、そんなに買いこんで後で困るだろうというスーパーの詰め放題イベント...。こうしたこととは逆を行く暮らしとでもいえばいいだろうか。
整理整頓された部屋で、上質なコットンのワンピースを着て、ずっと何年も探してようやく出会えたアンティークの椅子に座り、民藝の器にはオリーブオイルと塩だけのオシャレなベビーリーフサラダ、そしてアサイーのスムージをいただく。こういった世界観を少しでもマネたい、取り入れたい人のためのハウツー本、エッセー本が売れているという。
アイコンとなるのは、エッセイストやスタイリスト、デザイナーなどのお洒落人種である。紙面には彼・彼女らが愛用している食器や家具、洋服、シーツ、クッションカバーにいたる布製品、調理器具などなどが写真とコメントとともにワンサカ載っている。30代~50代女性を中心に売り上げは好調で、韓国や台湾などで海外版も出版されているというから驚きだ。
大人の女向けと10~20代ギャル向け
ここまで書いてすでに息がつまりそうな私だが、実はこういった「シンプルでノーブルな暮らしをしましょ」を提案する番組を制作していたりもする。一方で、10代~20代前半のギャル向け番組にも携わっている。こちらではメイク方法や男を落とすテクニック、使えば気分が盛り上がるカワイイグッズなどを紹介している。この信奉者も多く、数多くの雑誌が海外版を出版しているニーズの高いジャンルだ。
たしかに、一度、整形級メイクにはまった読者は、もうすっぴんには戻れない心と体になってしまう。変身願望を叶えてくれるメイクだが、よくもまぁ、ここまで女の子たちは化けることに知恵を絞り時間をかけているものだと感心してしまう。これじゃぁ、テレビ見る時間も、世間の一般常識を得る時間もないよねと納得する。その情熱に乾杯したくなった。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。