処女だからこそ、恥ずかしげもなく大胆な姿をさらすことができる
――ぼんちゃんはBL好きな腐女子で、「アナル」とか「肉棒」とか、過激な言葉をポンポン口に出す。しかし、不思議にいやらしさを感じさせませんよね。
腐女子はオタクの中でも特に濃い人たち。過激なことを言うけれど、現実感が希薄なので、いやらしさがない。昔、女子プロレスラーは処女が多いと聞いたことがある。処女だからこそ、恥ずかしげもなく大胆な姿をさらすことができるのだと。腐女子にもそれに近いものがあるのかもしれない。
――クライマックスは、ラブホテルで"ぼんちゃん"が"みゆ"と激しいバトルを戦わせるシーン。このシーンもすごく長い。
ぼんちゃんという子は、知識はあるが経験はない。みゆは、経験はあるけど、意識が追いついていない。大人になることを拒絶しているようなぼんちゃんと、早々と大人になってしまったみゆ。対照的な2人を対立させる形で脚本を書き始めた。書き進めているうちにどんどん長くなっていった。どちらの言い分にも正しさがある。両方を応援するような感じで書いた。
――どちらも否定していないと?
そう。2人とも頑張ってほしいなと。みゆのようなタイプは、経験という殻で自分を閉じ込めてしまっていることに気づいていない子が多い。でも、その殻から1歩踏み出し、違った空気に触れれば、他人にもっとやさしくできるかもしれない。一方、ぼんちゃんのような子は、経験がないという部分ではねつけられてしまい、自己主張できなくなったり、挑戦をためらったりしがちだ。そんな子には、もっと勇気を持って無軌道に行動してほしい。現状に甘んじないで、自分の可能性を切り開いてほしい。そんな思いを込めて、この映画を作った。
─―観客に何かメッセージを。
オタク文化に抵抗がある人、苦手な人はいると思うが、この映画はオタクの世界を描いているわけではない。偏見なく見てもらえば、オタクの人たちも自分たちと変わらないと思ってもらえるはず。映画を見た後、ものの見方が少しでも変わったなと思ってくれたら、うれしい。
「ぼんとリンちゃん」(2014年、日本)
監督:小林啓一
出演:佐倉絵麻、高杉真宙、比嘉梨乃、まつ乃家栄太朗、桃月庵白酒
2014年9月20日(土)、新宿シネマカリテ、シネ・リーブル梅田ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。