アイルランドの主婦、フィロミナ・リーによるノンフィクションを映画化した「あなたを抱きしめる日まで」。50年前に別れた息子を探し求める母親の物語だ。出演は「恋に落ちたシェイクスピア」(98)のジュディ・デンチ。彼女をを助ける元記者役のスティーブ・クーガンが製作、脚本を兼任している。監督は「クィーン」(06)のスティーブン・フリアーズ。
修道院は子供の人身売買をしていた
教会で祈りを捧げるフィロミナ(デンチ)の心は乱れていた。半世紀前に生き別れた息子を思っていたからだ。娘のジェーンは、白黒写真の子供を見て涙ぐむ母に「誰なの?」と問い質す。母は隠し通した息子の存在を語り始める。
息子を探すフィロミナの旅。元記者のマーティン(クーガン)とともに足跡をたどるが、ミステリーのように謎を多く含んだ幕開けだ。時代は1952年。若きフィロミナが犯した過ち、勘当されて入れられたカトリック系修道院。息子アンソニーと離れ離れなった真相が明らかにされる。
婚外子を妊娠した少女を受け入れる修道院では、慈善活動の裏で、出産後には母親たちを朝から晩まで働かせていた。母と子は隔離され、会えるのは1日1時間だけ。フィロミナの息子は3歳になった時、母親の意に反し、養子として米国人夫婦に引き取られた。
修道院へ向かったフィロミナとマーティンだったが、院側は事実を認めない。八方ふさがりに見えた帰り道、立ち寄ったバーで「修道院は子供の人身売買をしていた」という情報をつかむ。二人はアンソニーを追い、米国へ旅立つ──。
修道院と人身売買。信仰深い主婦と元敏腕記者。対照的な要素が示される。境遇の違う二人がぎくしゃくしながらも足並みをそろえる様子は、擬似親子のようにもみえる。旅の過程で次々と事実が明かされ、物語は意外な方向へ動き出す。
息子探しの現在と並行し、フィロミナの過去を回想で描く。アンソニーの生い立ちは8ミリビデオやホームビデオの映像を使用。98分の枠の中で全体像を分かりやすく説明している。主演二人も柔軟で手堅い演技だ。
「あなたを抱きしめる日まで」(2013年、英・米・仏)
監督:スティーブン・フリアーズ
出演:ジュディ・デンチ、スティーブ・クーガン、ソフィ・ケネディ・クラーク、アンナ・マックスウェル・マーティン、ミシェル・フェアリー
2014年3月15日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。