2013/12/ 5

映画「セッションズ」/38歳の障害者が"童貞喪失"に挑むヒューマンドラマ

恋愛とはそういうもので、健常者と障害者の区別はない

セックス・サロゲートとして高い職業意識を持ったシェリル。マークとのセッションが終わるごとに、内容をボイスレコーダーに記録し、次へつなげていく。セッションでは、あえて浴室のドアを開けたまま小用を足し、音でマークを興奮させる演出も見せる。

すべての行為は、割り切ったプロの仕事のはずだった。しかし4度目のセッションで、彼女は思いもよらぬ感情の変化を経験する――。

重いテーマを扱った映画である。だが少しも暗さを感じさせないのは、マークのポジティブな性格による。彼は運命を受け入れ、自分ができることに精一杯のエネルギーを注いでいる。自らの置かれた悲惨な状況を、突き放した視線で眺め、笑い飛ばすユーモアもある。

だから友人にも恵まれる。教会のブレンダン神父。婚外交渉を戒める立場ながら、彼は躊躇(ちゅうちょ)するマークの背中を押し、セックス・サロゲートのもとへ送り出す。童貞喪失の報告を受ければ、自宅を訪れ祝杯を上げる。神父は憐憫(れんびん)の情から、彼に接しているわけではない。心から彼の人間性に惚れているのだ。

それはシェリルとて同じだ。職業的使命感からセックスを教えたが、マークの人間性に触れ、想定外の感情にとらわれてしまう。体が触れ合い、心もつながっていく。恋愛とはそういうもので、健常者と障害者の区別はないのである。


「セッションズ」(2011年、米国)
監督:ベン・リューイン
出演:ジョン・ホークス、ヘレン・ハント、ウィリアム・H・メイシー、ムーン・ブラッドグッド、アニカ・マークス
2013年12月6日、新宿シネマカリテほかで全国順次公開。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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