君はハエに感情移入できるか。インド映画「マッキー」の見どころはずばり、主人公がCG(コンピューター・グラフィックス)で作られたハエであることだ。
体調数ミリのハエが、スクリーンをところ狭しと飛び回る
物語は分かりやすい。貧乏青年のジャニ(ナーニ)が、向かいに住む美少女ビンドゥ(サマンサ・ルサ・プラブ)に恋をする。両想いになったのもつかの間、悪徳社長スディープ(スディープ)の横やりが。ジャニはスディープに殺されるが、ハエとして生まれ変わる。愛するビンドゥを守り、憎きスディープに復讐するため、ハエになったジャニは孤軍奮闘する──。
体調数ミリの小さなハエが、大スクリーンをところ狭しと飛び回る。ハエは言葉を話せない。身ぶり手ぶりで意志を表すほかない。自分がジャニの生まれ変わりだと伝えるため、あの手この手でビンドゥに思いを伝えようとする。机に落ちた水滴で文字を書いたり、スディープにまとわりついて困らせたり。リアルな造形とスピード感が素晴らしく、知らず知らず感情移入させられる。無表情のはずのハエに、喜怒哀楽があるように見えてくる。
VFX(視覚効果)を手がけたのは、インドのSFアクション大作「ロボット」(10)の製作チーム。インド映画史上最多のカットを費やし、実写の人間ドラマとCG(コンピューター・グラフィックス)のハエを融合させた。ハエの細部にいたる作り込み、視界360度を存分に使った空間描写。インドCG技術の底力を感じさせる。
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