2013/10/17

映画「危険なプロット」/現実の中に虚構が忍び込む。これぞオゾンの真骨頂

あなたも小説の登場人物に「同化」したことはないか

若い女の色香に迷った男が、愛欲にのめり込み、翻弄された果てに、身を持ち崩す。ありがちな転落劇のバリエーションかと思わせつつ、物語は思わぬ方向に展開。意外な結末へ至る。映画はクロードやジェルマンが生きる現実世界と、クロードが創造した虚構世界を往復する。最初は区別して見られるが、次第に境界があいまいになる。虚構に現実が侵入してくるのである。読み手であるジェルマンの想像力の反映、と思っていると、やがてそれも怪しくなる。このシュールな感覚は、オゾン作品特有の味わいだろう。

しかし、人は小説などを読む時、同じ感覚を当たり前に経験するようにも思える。登場人物に同化し、対話する。誰しも無意識にするのではないか。「危険なプロット」は作文=小説が書かれるプロセスを描くと同時に、小説を読む行為がいかなる経験か、映像で表現した作品かもしれない。


「危険なプロット」(2012年、フランス)
監督:フランソワ・オゾン
出演:ファブリス・ルキーニ、エルンスト・ウンハウワー、クリスティン・スコット・トーマス、エマニュエル・セニエ
2013年10月19日、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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