2013/10/ 4

映画「パッション」/初期デ・パルマ作品に通じるサスペンス バイセクシャル、同性愛などが隠し味に

パソコンを仲良くのぞき込む女性2人。クリスティーン(レイチェル・マクアダムス)とイザベル(ノオミ・ラパス)は、ベルリンの広告代理店で上司と部下だった。2人はスマートフォンのCM用動画を製作中。イザベルは新しいアイデアをひらめき、プロモーション用ビデオを作る。

その後、クライアントが待つロンドンに向かったイザベルは、プロモーションを見事に成功させ、出張に同行した愛人ダーク(ポール・アンダーソン)と熱い一夜を過ごす。しかしベルリンのオフィスに戻ると、クリスティーンの信じられない仕打ちが待っていた。イザベルの手柄を横取りし、米ニューヨーク本社復帰を手にしたのだ──。

クリスティーナの殺害シーンが秀逸

ブライアン・デ・パルマ監督、5年ぶりの新作「パッション」。監督は若き日に「キャリー」(76)、「殺しのドレス」(80)などのスリラーで、"ヒッチコックの後継者"と呼ばれた。その後、犯罪映画「スカーフェイス」(83)、「アンタッチャブル」(87)、大作の「ミッション・インポッシブル」(96)、「ミッション・トゥ・マーズ」(00)を経て、再びフィルムノワールへ回帰した。

「パッション」は、仏映画「ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて」(10)のリメイク。初期デ・パルマ作品に通じるサスペンスだ。広告業界を舞台に、美女2人が出世に火花を散らす。ねたみと嫉妬が交錯し、憎しみへ発展し、ついに殺人に至る。バイセクシャル、同性愛などが隠し味となり、エロチック路線全開だった「殺しのドレス」、「ボディダブル」(84)を思い出させる。

監督得意の映画的表現法も際立っている。中でもクリスティーナの殺害シーンは秀逸だ。劇場でバレエを観るイザベルの目に映る世界と、クリスティーナが殺される過程。まったく別の出来事を、分割画面を使い同時進行で描く。「キャリー」などで効果を発揮した手法で、監督は観客を混乱と恍惚の世界へいざなう。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

[続き]「殺しのドレス」の金髪美女が再び!?
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