山本兼一の直木賞受賞小説の映画化作品「利休にたずねよ」主演の市川海老蔵、中谷美紀、田中光敏監督が東京都内で7月10日、完成報告記者会見した。父・團十郎との最後の共演に、市川は「言葉に言い表せないものがあった」と感慨深げに振り返った。
公開される頃にはこの世にはいないことを悟っていたのかもしれない
織田信長、豊臣秀吉らに多大な影響を与えた茶人・千利休の美意識が、若き日の情熱的な恋に始まっているとしたら──。大胆な仮説をもとに、天才の美意識の謎に迫る歴史ミステリー「利休にたずねよ」。市川海老蔵の主演は、田中監督と脚本家たっての願いだったという。市川は「どうしても海老蔵君にやってもらいたい、とお手紙をくれた。最初は丁重にお断りしたが、わざわざ会いに来てくれて、前向きに話を聞き受けることになった」と語った。
利休の妻・宗恩を演じた中谷は、十代からお茶のCMに出演してきたため「女優人生はお茶とともにあった。茶道に興味もあり、作品になんらかの形でかかわりたかった。利休役が"平成の狼藉者"海老蔵さんで(笑)、どんな困難があっても演じてみせると思いました」と笑顔を見せた。
利休の10代から70歳近くまで演じるため、細かい所作にも気を配ったという市川。間やしぐさで感情を表現するなど、すみずみまで行き届いた演技を見せている。完成後の作品を見て「普段は自分の作品で泣かないし、ひいき目で見ないけれど、今回は涙が出た。若い人に見てもらえれば『芸術は普通の人から始まったんだな』と分かってもらえるのでは」と話していた。
また、同作には2月に亡くなった市川團十郎も特別出演。最後となった親子共演に「(撮影前に)父に家に呼ばれ『出させて頂きます。今回はあなたが主役です』と言われた。出演は3、4シーンなのに、資料を山のように積み、かなりこだわって役作りしていた」と市川。利休の演技で意見が異なった時も、以前と異なりすんなり息子の主張を通したという。「父は映画が公開される頃には『自分の命はないかもしれない』と認識していたのではないか。映画で父の姿を見て、言葉で言い表せないものがあった」と振り返っていた。
「利休にたずねよ」(2013年、日本)
監督:田中光敏
出演:市川海老蔵、中谷美紀、伊勢谷友介、大森南朋
2013年12月7日、全国東映系で公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。