巧みな脚本により同時進行する4つのエピソード
第3のエピソードは、若い建築家ジャック(ジェシー・アイゼンバーグ)が恋人サリー(グレタ・ガーウィグ)の友人で売れない女優のモニカ(エレン・ペイジ)に翻弄される話。サリー以外の女性は眼中にないジャックだったが、小悪魔的な魅力を持つモニカに、いつのまにかメロメロ。そんなジャックの前に、著名な建築家のジョン(アレック・ボールドウィン)が現われ、アドバイスを始める――。
ジャックに影のようにつきまとうボールドウィンの役回りは、アレンの脚本・主演作で、日本でも大ヒットした「ボギー!俺も男だ」(72)のボギーそっくり。紆余曲折を経て原点に回帰してきたアレンの融通無碍な演出が冴える。
第4のエピソードは、平凡なサラリーマンのレオポルド(ロベルト・ベニーニ)が主人公。いつものように出勤しようと自宅を出たレオポルド。いきなり、マスコミに取り囲まれ、車でテレビ局に連れて行かれる。訳も分からず、スタジオでくだらない受け答えをするレオポルド。なのに、なぜか大受け。一躍"時の人"に祭り上げられてしまう――。フェリーニの「甘い生活」(60)のテーマでもあったメディアの狂騒、巻き込まれた男の滑稽と悲哀が描かれ、他の3つとは味わいの異なるエピソードに仕上がった。
4つのエピソードは順番にではなく、同時に進行。場面は次々と転換していく。それでも混乱せず見られるのは、脚本の巧みさだろう。いずれもちょっと肉付けすれば、独立した長編になるくらい内容が充実。ローマの観光名所や穴場スポットを全編に組み込んだ映像も楽しい。なんとも贅沢な作品だ。
「ローマでアモーレ」(2012年、米・イタリア・スペイン)
監督:ウディ・アレン
出演:ウディ・アレン、アレック・ボールドウィン、ロベルト・ベニーニ、ペネロペ・クルス、ジュディ・デイヴィス、ジェシー・アイゼンバーグ、グレタ・ガーウィグ、エレン・ペイジ
2013年6月8日、新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。