置き去りにされた長女が暴力をふるう 見ていて辛い...
1人置き去りにされた長女が、大した理由もなく年下の子に暴力をふるい、そのことで相手になじられる場面は、見ていてつらいものがある。母親の存在をちらつかせて強気に出る相手にたじろぐ長女の表情。ワン監督の手持ちカメラが容赦なくとらえる。
姉妹3人の生活、父の帰還、長女1人だけの生活、父と妹たちの帰還――。淡々とした映像の中に、起伏のあるストーリーや印象的なショットがあり、1編のドラマとして楽しむことができる。フィクション作品の「無言歌」がドキュメンタリー的要素を持っていたように、ドキュメンタリーである本作にはフィクションの要素がある。抜け目のない撮影と、巧みな編集が、虚実の境目をあいまいにしているのである。
父親と娘たちがバスに乗り込む場面では、カメラを手に同行する監督の存在を隠さないことで、あえて作品の虚構性を際立たせてもいる。
貧困地帯で生きる少女たち。その過酷な現実が、監督の主観的な操作を通して、ドラマチックな映像へと変換され、見る者に深い感銘を与えてくれる。
「三姉妹 雲南の子」(2012年、フランス・香港)
監督:ワン・ビン
2013年5月25日、渋谷シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。