阪神大震災で自宅が全壊した作家・宮本輝は、その半年後にシルクロード約6700キロを旅した。旅先での体験をもとに記された小説「草原の椅子」が、ヒット作「八日目の蝉」の成島出監督の手で映画化された。
50歳で訪れた3つの出会い
主人公は4人。まずはバツイチで娘と暮らすカメラメーカー次長の遠間憲太郎(佐藤浩市)と、中卒で会社を興したカメラ販売店社長の富樫重蔵(西村雅彦)だ。2人は取引先同士。ある日、富樫のピンチを救った遠間は「親友になってくれ」と頼まれしぶしぶ承知。同年齢ということもあり2人は徐々に打ち解けていく。
そしてヒロインの篠原貴志子(吉瀬美智子)。遠間はある日、タクシーの窓から雨の中を走る貴志子を見る。引き寄せられるように貴志子が営む陶器店に入り、話の糸口が見つからないまま高い陶器を買ってしまう。遠間は貴志子に淡い恋心を抱くが、彼女にはつらい過去があった。
最後に4歳の圭輔(貞光奏風)だ。母親の育児放棄で言葉が話せず、心を閉ざしている。圭輔は遠間の娘(黒木華)のバイト先上司の妻の連れ子だった。遠間父娘は圭輔を一時的に預かることになるが、転職が決まった喜多川は圭輔の扶養を拒否。圭輔の母(小池栄子)も引き取りを拒み、圭輔は遠間の手にゆだねられてしまう──。
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