2013/2/ 1

「コックファイター」(ニュープリント版)
39年の時を経て日本初上陸 "闘鶏バカ"のクールな生きざまを描いた幻の良作

ハリウッドのメジャー・スタジオで初製作した「断絶」(71)が興行的に失敗し、恩師である製作者ロジャー・コーマンのもとに戻ったモンテ・ヘルマン監督が、再起を図るべく撮った作品が「コックファイター」(74)だ。主人公は、闘鶏(コックファイト)に人生を捧げた男、フランク・マンスフィールド。闘鶏のためには、恋人も、家族も、家も、すべてを犠牲にしてはばからない"闘鶏バカ"である。

しゃべりすぎた男をウォーレン・オーツが熱演

ストイックな生き方を象徴するのが、誰とも一切口を利かない徹底的な沈黙のスタイル。口がきけないわけではない。ライバルであるジャックとの私的な闘鶏で、大口を叩いていたくせに負けたと批判され、「じゃあ、チャンピオンになるまで一言も発するものか」と誓いを立てたのだ。本来は口から先に生まれてきたような男。心の中ではひっきりなしにしゃべり続けている。要するに沈黙は単なるポーズなのだが、発話を封じ身振り手振りで意思疎通するさまは、なかなかクールである。

闘鶏ひとすじのフランクだが、実は婚約者がいる。年間チャンピオンを決する大試合にフランクは彼女を招待。婚約者は生まれて初めて闘鶏を目にするのだが――。ラストにフランクが初めて発するセリフが、"粋でいなせ"でぐっとくる。チャンピオンになり、晴れて好きな女と一緒になる。そんな夢を胸の奥に秘めてストイックな日々を送ってきた男の意気地、忍耐、そして哀愁を、名優ウォーレン・オーツが絶妙に表現している。その演技は絶品の一言。やはりヘルマン作品にはオーツが欠かせない。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

[続き]闘鶏シーンはドキュメンタリーのような生々しさ
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