(c)ORIGIN PICTURES (X&Y PROD) LIMITED/THE BRITISH FILM INSTITUTE / BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2014
数学の才能に秀でたネイサン少年は、人づき合いが大の苦手。唯一心を開いていた父親が事故死してからは、完全に心を閉ざし、数学の世界に没入していた。そんなネイサンの将来を気遣った母親は、かつて数学オリンピック選手だったこともある学校教師のマーティンに、息子の個人教授を依頼する。特訓の甲斐あって、才能を伸ばしたネイサンは、数学オリンピックの英国代表メンバーに選ばれた。
最終選抜の行われる台湾合宿では、強豪の中国チームと合同で特訓の日々。そこでも他人と打ち解けることはなかったネイサンだが、ペアを組んだ中国人少女チャン・メイだけは別だった。数学が人生のすべてだったネイサンが、チャン・メイと出会い、初めて数学以外の喜びに目覚める。ネイサンにとって大きな転機が訪れる――。
「あんたは頭が悪いから」
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モーガン・マシューズ監督が、2007年に自身の撮ったドキュメンタリー「Beautiful Young Minds」(07)をドラマ化した。ドキュメンタリーでは描き切れなかった主人公の内面を掘り下げ、感動的な作品に仕上げている。
数学の世界に閉じこもり、数学だけを生きがいにしていた少年が、初恋を通して、数学以外の人生に目が開かれる。その契機となったのが数学オリンピックであるというのが、皮肉でもあり、爽快でもある。
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勉強を手伝おうと歩み寄る母親を拒絶し、「なぜ?」と問う母親に「あんたは頭が悪いから」とい言い放つ。主人公の冷血なキャラクターが、恋を知ることで、変化していく。息子と母の関係が変わっていく。どんよりと曇っていた2人の人生が輝きを放ち始める。
金メダルをかけた天才少年の物語が、後半は思春期の少年のラブストーリーへと一転する。少年と少女の心のふれあい、求め合い。しかし、それがトラブルを引き起こす。主人公は追い詰められ、人生の選択を迫られる。そこで彼が導き出した"解"は何だったのか?
自分の殻に閉じこもっていた少年が、恋する少女によって殻を破られ、すさまじいエネルギーで外界に飛び出していく。思わず快哉を叫びたくなる、青春映画の傑作である。
「僕と世界の方程式」(2014年、英国)
監督:モーガン・マシューズ
出演:エイサ・バターフィールド、レイフ・スポール、サリー・ホーキンス、エディ・マーサン、ジョー・ヤン
2017年1月28日(土)、YEBISU GARDEN CINEMAほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。