【第32回】ミュージカルとシルク・ドゥ・ソレイユが融合 魔法のミュージカル「ピピン」9月来日
ミュージカル『ウィキッド』の作詞作曲家スティーヴン・シュワルツが1972年に手掛けた傑作ミュージカル『ピピン』。2013年に息をのむほどのエキサイティングな新演出でブロードウェイでリバイバルされ、その年のトニー賞では最優秀リバイバル作品賞を含む4部門を受賞しました。今年、ブロードウェイでのロングラン公演を終え、全米ツアーへと進出した最新ミュージカルが、早くも本年9月に来日をはたします。
今回の新演出版は、本作品でトニー賞最優秀演出賞を受賞したダイアン・バウラスが手掛けた斬新な作品となっています。初演版の振付を担当したミュージカル界の奇才ボブ・フォッシーのスタイルを踏襲する刺激的なダンスシーンに、シルク・ドゥ・ソレイユ出身のアーティストが手掛けた驚愕のサーカスアクロバットがスティーヴン・シュワルツの壮大な楽曲と『ピピン』の物語に見事に融合し、これまで観たこともないような新しいミュージカルエンターテインメントが誕生しました。
出演者全員がアクロバットを披露
幕が開き、狂言回しが観客を誘惑する始まりの瞬間からスペクタクルなシーンが展開します。物語の進行とともに、パフォーマーの身体は空へと舞い、驚くほど歪曲し、古典的なサーカス芸をも披露します。それは、物語の主人公たちも例外ではありません。歌って踊り、時には剣を投げ、一輪車、フラフープ、空中ブランコ、と次から次へとアクロバットを行なうのです。
美しいカリスマ的な狂言回しが観客を魔法の世界に招き入れると、若き青年を主人公とした劇中譚「ピピン王子の物語」が舞台上で繰り広げられます。
物語はこうです。ある日、品行方正・学業優秀なピピンは"素晴らしく特別な何か"を探し求める旅に出て、父であるチャールズ王に忠誠を示すために戦争へ向かいます。そこで狂言回しに暴君となったチャールズ王を殺すように仕向けられ、ピピンは王位に就きます。しかし、大きな過ちに気が付いて再び狂言回しの力を借り、父を蘇らせ元の世界を取り戻します。
再び"素晴らしく特別な何か"を探し求める旅の途中、未亡人のキャサリンと彼女の息子テオに出逢い、ピピンは初めて平凡で平和な生活を知ります。ところが、特別な何かを求めないことに焦りを感じたピピンはこの幸せな生活を捨て去ってしまいます。いよいよ、狂言回しが設けた壮大で目を見張るような劇的なフィナーレを演じようとするピピン。その時、彼が見出した人生の真の意味とは......?
等身大の主人公が直面する人生の苦楽は時代も国境も超えるテーマです。心を癒し、胸を熱くする魔法のミュージカル『ピピン』の世界をのぞきに行きませんか。
ブロードウェイミュージカル『ピピン』
東京公演 9月4日(金)~9月20日(日) 東急シアターオーブ
作曲:スティーヴン・シュワルツ
脚本:ロジャー・O・ハーソン
演出:ダイアン・パウラス
サーカス・クリエーション:ジプシー・スナイダー
振付:チェット・ウォーカー
作品の詳細は公式サイトで。
演劇評論家。ラジオや雑誌等で多くの演劇コーナーを担当。トニー賞授賞式に20年出席している唯一の日本人。広告会社電通に勤務する会社員でもある。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。