別冊漫画ゴラクで連載中の相原コージ作「Z ゼット」が実写映画化された。「予言」(04)、「おろち」(08)など日本ホラーの先駆者・鶴田法男監督が、初のゾンビ映画に挑む。
女子高生・あかりが幼なじみの恵に失恋を打ち明けたところ、二人の日常は一変。男が二人を襲うため迫ってきた。助けに現れたのはアイパッチをした少女。なぎなたを振りかざし、生ける屍=Zを斬り倒した。しかしZは手足だけになっても襲ってくる。三人はあかりの姉・香澄と合流。建物の最上階へ避難するが、恵だけ下へ落ちてしまう。最上階には屈強な男・山下、公務員の平ら6人が避難していた──。
中学生は女性ゾンビにエッチな妄想を抱く
ジョージ・A・ロメロが監督した「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(68)。死者がよみがえり、人々を襲うホラーはゾンビ映画の原点となった。死者たちは生きた人間を襲って肉を食らう。ゾンビに咬まれると死んだ直後にゾンビになり、脳を破壊されなければ死なない。ロメロのルールはそのままそれ以降のゾンビ映画のルールになった。「Z ゼット 果てなき希望」では、新たに「脳を壊しても死なない」新解釈が加えられている。
今回はロメロ作品などカルト映画への愛があふれている。映画オタクの恵は、テレンス・マリック監督のデビュー作「地獄の逃避行」(73)、ロメロ監督初期の傑作「クレイジーズ 細菌兵器の恐怖」(73)を熱く語る。アイパッチは「ニューヨーク1997」(81)へのオマージュ。「ゾンビ」(78)にならってエレベーター、格子柄のシャツを使うなど遊び心も楽しい。
Zに襲われる恐怖を描く一方、生への執着も匂わせる。最上階に避難した男女は、死の恐怖が迫ると"生殖本能"を活発化させる。女性は男を誘惑し始め、好奇心旺盛な中学生は女性ゾンビにエッチな妄想を抱く。しかし、かまれていない人間まで死亡する事態が発生。生き残った者たちは感染源の究明を始める。
通常のカメラに加え、手持ちカメラの主観映像、監視カメラ映像など、ホラー映画の流行をどん欲に取り入れている。低予算ではあるがアイデアとユーモアを交え、ロメロへの愛をうたう和製ゾンビ映画だ。
「Z ゼット 果てなき希望」(2014年、日本)
監督:鶴田法男
出演:川本まゆ、木嶋のりこ、田中美晴、佐藤永典、櫻庭由加里
2014年7月26日(土)、シネマート六本木ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
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