朝、早く起きなければならない時によくやるのが、前の晩に起きる時間の数だけ枕をポンポン叩く、というおまじないです。例えば七時だったら七回、七時半だったら七回+軽めの一回など......。かなりの確率でその時間に起きられるのが不思議です。守護霊様? それとも枕の神様? もしくは自分の潜在意識の働きでしょうか。ふだんならそれでOKなのですが、新幹線に乗るとか、朝からロケとか、絶対に遅れられない場合は、枕の神様よりも文明の利器、目覚まし時計に頼ることになります。
目覚まし時計を買う時はいつも慎重になって何軒もはしごしてしまいます。寝る時に視界に入るものなので、良質な睡眠のためにもできるだけ素敵なデザインのものを選びたいです。ちょっと前まで、Theo Williamsとかいう人がデザインしたおしゃれ目覚まし時計を愛用していました、たしかコンランショップで8000円くらいしたのですが、2年くらいで壊れて7時77分とかあり得ない時刻を表示するようになってしまい、恐くなって使うのを中止。その後、最近まで使っていたのが、たしかロフトで購入したリンゴ形のかわいい目覚まし時計です。
うわさ大好きマダム、推定48歳
温度も表示されて便利なうえ、目覚まし音もカッコウやソフト電子音など、耳障りでもない感じで、長く愛用できそうだと思っていました。
しかし数ヶ月ほど使ううちにどうしても気になってきたのが、時間を教えてくれる女性の声です。たいてい時計のアナウンスは、若い女性の美声が多いと思うのですが、この時計の女性の声は若干くたびれているのです。加齢とともに声は低くなってノイズが入りますが、この時計の声の主も推定48歳、近所のうわさ話が気晴らしのマダム、といった印象で、「ただいまの時刻は午前8時30分、32度です」と、目覚ましと共に教えてくれるのですが、朝からテンションが下がります。諸行無常というか、空即是色というか、そんな諦念(ていねん)の境地で一日が始まりそうです。
それはそれで俗世を超越できそうで良いのですが......、なんとなくこの声のおかげで若さが、残り少ない女子力が、ますます干上がっていきそうな予感がしてきたので、この場を借りて提供させていただきます。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。