辛酸なめ子の東京アラカルト
漫画家・コラムニストの辛酸なめ子さんが注目する東京のお出かけスポットやイベントを紹介。辛酸さんならではの視点、現地でのエピソードに思わずニヤッとしてしまいます。
2022/2/11

ポーカールームでZ世代にまみれた体験【辛酸なめ子の東京アラカルト#59】

ポーカーの手ほどきを受けてさっそく参戦。記憶力の衰えが......

 

ビギナーズテーブルでは、まず「ロイヤルストレートフラッシュ」「フォーカード」「ツーペア」「スリーカード」「ハイカード」といった役についてと、札のランク(エースが最強で2が最弱)、ゲームの流れや、アクションについてレクチャーを受けました。

(それぞれの手札を出して、誰が一番強いかディーラーさんがチェック。このカードがなかなか覚えられないです)

場の札と自分の手札2枚で勝負します。手札を相手に見られないように、手で隠してそっとめくる方法なども教えてもらいました。

チップはひとり200枚となくなった時用保険の100枚が配布。主なアクションには、「コール」(前の番人と同額チップを賭けて勝負続行)、「レイズ」(前の人より高額なチップを賭ける)、「フォールド」(手札がいまいちな場合2枚の手札を場に出して降りる)があります。アクションをパスして様子見したい時は「チェック」と言ったり合図でテーブルを2回叩きます。

ポーカーの楽しみの一つはコミュニケーションだとお店の方も話していましたが、駆け引きしながら時には助言しあったり、和気あいあいとした雰囲気。合法のクリーンなお店で実際お金を賭けてないので平和な空気なのかもしれませんが......。試しに何回か練習してみたあと、約一時間実際にプレイしました。

最初はついひよってしまい、「チェック」を連発したりショボい手札だとすぐあきらめて「フォールド」したりしていましたが、現実にお金を賭けていないから失うものはないと気付いて次第に勝負をしかけるように。「ツーペア」や「スリーカード」などで地道に増やしました。プレイするうちにポーカーは人の性格が出るかもしれない、と思えてきました。

(駆け引きにプチ勝利してチップが集まってきた瞬間。承認欲求が満たされました)

若者は恐れ知らずで突然「オールイン」といって全チップを賭けたりします。大人男子は5枚、10枚と少しずつ賭ける額を増やしていって慎重派でした。手持ちの札がそこまで強くないのに、掛け金をどんどん増やす策士もいました。

あとは、他人のチップの動きをチェックしていて「この2人はチップ6枚ずつ出してないですよ」と、出し忘れを細かく指摘する人も。デートで行ったら、同伴者がどんな稼ぎ方や勝負をする人かわかりそうです。

(慎重に小額を賭けて増やしていった30代くらいの男性が、ビギナーズテーブルで優勝。勝者は好きな数字でチップタワーを作ってもらえる特典が)

またここで出会ってポーカーで価値観が合うことがわかって仲良くなるパータンもありそうです。相手の甲斐性やケチ度の判断基準にもなるかもしれません。など、勝手に人をジャッジしてしまいましたが、私自身は手持ちの2枚のカードを何度見ても覚えられず、記憶力の衰えを実感しました。ポーカーで記憶力を鍛えられるでしょうか。

あとは女性の方々に伝えたいのは、ポーカールームは男性が8割なので、疑似モテ感を味わえるということです。錯覚ですが男性に囲まれているような気分で女性フェロモンが分泌。しかも年齢層が若めで、大学の部室のよう。「またファイナルテーブル座りて~」「オレらで一緒に座ろう!」なんて会話が聞こえてきて青春でした。

陰キャから陽キャになろうとしているメンズたちの孵化直前のエネルギーが渦巻いているようです。いい役が出た時など叫び声が上がってハイタッチする人もいました。

ゲームを楽しんだだけでなく、若さを吸収し、心が満たされたスポットでした。またX世代ということを隠して、Z世代に混ざっていきたいです。

辛酸なめ子

東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。武蔵野美術大学短期大学部デ ザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著に、『ヌルラン』(太田出版)、『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後』(PHP研究所)『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)『愛すべき音大生の生態』(PHP研究所)などがある。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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