過去のフロア構成がフラッシュバック。全てを上書きするユニクロパワー
それにしても、あんなにハチミツ屋やパン屋、きりたんほ屋、みかんジュース店、コーヒー豆の店、ちくわ屋などいろいろひしめいていた1階が、ユニクロの衣類で埋め尽くされるとは......。
(浅草といえば人力車が。電気もガソリンも使わないのでエコロジーの元祖です)
人力車や法被姿のマネキンが展示されている一角は、かなりおいしかった新潟のお米のおにぎり屋「いなほ新潟」があったところでした。閉店前の店員さんのさびしげな表情の走馬灯が脳裏を流れていきます。
しかし、PAUL&JOEとジル・サンダーコラボ「+J」がたくさん揃っているのを見た瞬間、感傷の思い出は消えていきました......。
2階はメンズやコラボ商品が充実。ちなみにリニューアル前、このフロアには漢方薬局やコスメショップ、神社グッズのお店などがありました。
かつての光景を思い出しつつも、ユニクロの渦に記憶が上書きされていきます。
「ユニクロ浅草」のコンセプトは「Our Neighborhood!」。地元の企業やアーティスト、商店とコラボした展示や装飾も見どころです。
(蔵前のファクトリーブランドnumeriの革製品。地元の人が近所を散歩するのに良さそうなサイズ感)
たとえばgoyemonというお店とコラボしたおしゃれな雪駄(1万8150円)や、和もののお店soiの手ぬぐい、レザーブランドnumeriのバッグなど売られていました。
吉原の遊女をモチーフにした岡野弥生商店の手ぬぐいも素敵でした。
(goyemonのスニーカーと雪駄が合体したおしゃれな履物。これで浅草の仲見世を歩いてお参りして落語でも行ったらハマりすぎです)
ちなみに雪駄とスニーカーが合体したはきものは約1万8000円、レザーバッグは2万円代後半など。ユニクロの中ではなかなか見ない価格帯です。クオリティーの高さは伝わってきます。
格差を感じたのはユニクロの安売りコーナー。Tシャツ290円という激安ワゴンセールのコーナーがありました。290円というのはめったにない破格さです。お一人様2点まで。微妙な色のTシャツでしたが、着こなしが上手い人なら組み合わせられそうです。
(Tシャツ290円というかなり激安コーナーも。色は微妙でもインナーやパジャマに......)
これにリラコやステテコ790円を組み合わせたら、下町の休日プチプラコーデが完成! ふだんの衣服代を節約することで浅草の地元コラボの高額商品を買えるという、そんなポジティブなスパイラルに入れそうです。
(蔵前の人気文具店、kakimoriのコーナーも。展示品は店内で売られていたりいなかったりします)
辛酸なめ子
東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。武蔵野美術大学短期大学部デ
ザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著に、『ヌルラン』(太田出版)、『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後』(PHP研究所)『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)『愛すべき音大生の生態』(PHP研究所)などがある。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。