辛酸なめ子の東京アラカルト
漫画家・コラムニストの辛酸なめ子さんが注目する東京のお出かけスポットやイベントを紹介。辛酸さんならではの視点、現地でのエピソードに思わずニヤッとしてしまいます。
2018/2/11

辛酸なめ子の東京アラカルト#11 猫が添い寝してくる至高のマッサージ

都会で疲れ切った女はどこへ行けばいいのでしょう? 公園で自然に囲まれたいと思いましたが、ちょっと想像するだけでも極寒です。即、野外のパワースポットは断念しました。

屋内で自然と触れ合える場所を探していたらテレビの動物番組ですばらしい場所が紹介されていました。それは、猫がいるリラクゼーションサロン。常々猫とマッサージが合体しないかと思っていましたが、理想の店が現実に存在しているとは! テレビではマッサージを受けるお客さんの上に猫ちゃんが乗ってました。さすがにそれは番組のやらせでは?と当初は思っていました。

でも、サロン「うたたね」のドアを開けると、まずどこからともなく白い猫がやってきて、挨拶するかのように私を見つめ、バッグの匂いを嗅いでいます。「店長です」と、紹介してくださるスタッフの女性。かなりの美猫で、リラクゼーションサロンの宣伝効果も高いです。

お客さんが来ると挨拶に来る猫店長。リアル招き猫です。

70分コースで、ヘッドとリフレクソロジーを選び、カーテンの奥へ。猫はさっきの挨拶くらいかと思ったら、ベッドにまた別の白い美猫が寝ていて驚きました。

「フクちゃんです」「何歳ですか」「3か月です」

仰向けでしどけない寝姿を見せるフクちゃん。しかも目の前でゆっくり寝返りを打ちました。

こんな姿で寝ているとは、とても平常心でいられません。変態のように息を荒げてしまいました。

「あぁーかわいいー」「さっきまで暴れてたんですよ」

子猫なので遊びたい盛りなんですね。着替えて人間がベッドに横たわり、まずはリフレクソロジーから。

骨抜きになる魔性の子猫の接客テク

照明を落としているので暗いですが、こんな感じで寄り添ってくれています。初対面なのにいいんでしょうか。

ベッドに横たわり、枕の横に寝ているなまめかしい白い体を横目でチラチラ見ていました。変態っぽくてすみません。それだけでも充分癒されていたのですが、途中で魔性の猫は体勢をチェンジ。

フクちゃんは腕に寄り添い、こちら向きになって腕枕してきました。

(悩殺すぎる......)

ゴロゴロいう喉の音がバイブレーションとなって全身を癒やします。

「自分の役割をよくわかってますね」

きっと天使が猫に生まれ変わったに違いありません......。腕枕で軽く腕が痺れてきましたが、それすらも至福です。

「すっかり気に入られましたね」「ほ、本当ですか......?」

思わず息が荒くなります。でも隣のブースからも「かわいい~ハァハァ」という女性の声が聞こえてきました。ちなみに猫好きのスタッフの方々も猫に似ていました。

フクちゃんが足を伸ばすと肉球が顔に当たり、快感に浸りました。あとで、そっと肉球をマッサージ。人間がしてもらったことを猫に返すという、癒やしのポジティブスパイラルです。

人にマッサージしてもらった気持ち良さを猫に還元。癒しのスパイラルです。

続いてヘッドマッサージになると、施術者の女性が猫をずらしましたが、まだベッドにいて、今度は足に寄り添ってきました。ふわふわの猫をなでながらマッサージを受けます。

「首すごい張ってますね」などと言われながら、意識が薄らいでいきました。猫と一緒に入眠する幸せ。猫と添い寝する以上の幸せはあるでしょうか。風俗好きの男性にもおすすめしたいくらいです。すみません、猫風俗、というワードが浮かびました。

終わった後フクちゃんは、じゅうたんの上でごろんとなり「どうだった?」というように見てきました。最後なでまくっていたら、時間を忘れて、お店の人に促されつつ、名残惜しさが後を引きます。

生きた招き猫として、すばらしい働きをしている猫たち。まだ小さいから人間に対しても苦手意識がないのかもしれません。猫カフェの猫みたいに疲れないように、また機会があったら猫をもみ返したりしたいです。リラックスよりも猫に興奮し交感神経が活性化してる時間のほうが多かった気もしましたが......。

辛酸なめ子

1974年、千代田区生まれ、埼玉育ち。漫画家・コラムニスト。著書に、『消費セラピー』(集英社文庫)、『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『女子の国はいつも内戦』(河出書房新社)、『なめ単』(朝日新聞出版)、『妙齢美容修業』(講談社文庫)、『諸行無常のワイドショー』(ぶんか社)、『絶対霊度』(学研)などがある。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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