いまや、テレビの街頭インタビューは「街のご意見番に聞く」という体裁をまとっているようですね。「夫にあんな不倫されたら、速攻別れます!」「被害を受けられたご家族が本当に気の毒ですよねえ。もう可哀想で、可哀想で」「結局、選挙っていっても、誰がなに言ってるのかよくわからなくて」などなど、視聴者とスタジオ出演者がVTRを見ていて、「そうそう私も同じ意見、そう思っていたのよ」とリアクションしやすいようなコメントが続々と出てきます。
どなたも、カメラを向けられても物おじせず堂々としたものです。まるで友達と話をするような感覚でマイクに語りかける、そういった人が以前より増えている気がしてなりません。テレビの仕事をしている自分でさえ、カメラをグっと向けられ、マイクを目の前に突き出されたら身構えてしまうと思うのですが、画面上に登場する人達から緊張している雰囲気は伝わってきません。
これまでは、インタビューですとカメラを向けると断る方が多かったと思います。私も街頭インタビューを何度もしたことがありますが、15人にインタビューして答えてもらえるのが3人、そのうち放送に使えるのは1人。そのぐらいの割合でした。
ほんの数分の間に緊張ほぐし、質問してしゃべらせ、放送承諾も取り付け
おもしろい街頭インタビューをどれだけ撮ってこられるかはスタッフの腕にかかっています。見知らぬ人に声をかけて、おもしろい話、制作側が求めている意見を短時間で引き出す。スッと寄っていって声をかけて立ち止まらせる。何か褒めていい気にさせておき、すかさず質問を畳みかける。さらに、相手の名前、年齢、職業といった個人情報だけでなく、「放送されるかわからないけれどいいですか」と許諾までとる。これをほぼ数分のうちにやってのけるのはまさに職人技です。
こうして腕のいいスタッフによるおもしろいインタビューが世の中に増えたことで、街頭インタビューに対するみなさんの警戒心が弱まっているのかもしれません。それでまた面白いインタビューを拾うことができるという好循環が生まれているのかもしれません。
モジョっこ
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。