出雲あきらの演劇Life
トニー賞授賞式に22回出席している唯一の日本人、出雲あきら氏が今注目のお芝居を紹介。演劇評論家でありながら現役広告マンでもある出雲氏独自の視点で、ビギナーさんにもぴったりな1本を紹介します。
2017/8/ 6

ピーターパン誕生の物語、ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』来日!

世界中で愛されている名作『ピーターパン』。日本でも毎年夏になるとミュージカル版が上演され、日本中の子供たちを楽しませてくれています。

実は、1904年にイギリスの劇作家ジェームズ・マシュー・バリが書いたこの作品には感動の誕生秘話があったのです。

劇作家としてスランプに陥っていたバリは、ある家族に出会い子どもたちとの交流を深めていくなかで一つの戯曲を書き上げます。しかし、その作品の上演は困難を伴うものでした。

この実話をベースに、バリ自身を主人公にして、ジョニー・デップ主演で2004年に公開された映画『ファインディング・ネバーランド』は世界中で大ヒットしました。

今回紹介する『ファインディング・ネバーランド』は、この映画版を2015年にブロードウェイでミュージカル化した作品です。昨年夏にブロードウェイ公演が終了した後、秋から全米各地をまわるツアー公演が開始されましたが、このツアーがそのまま東京にやってくるのです。ブロードウェイでの初演からわずか2年での日本公演は異例の早さです。

美しいファンタジーと現実の世界が混じりあうストーリー

19世紀後半のイギリス。仕事が行き詰まって落ち込んでいた劇作家のバリは、未亡人シルヴィアと4人の子どもたちと出会います。父親を亡くし傷心していた子どもたちの中で、特に心を閉ざしていたピーターは、バリとの交流で少しずつ子どもらしい心を取り戻していきます。バリの方も、子どもたちの遊びに加わるうちに、成長するピーターや、兄弟たちの無邪気さに触れ、劇作家としての自分の原点を思い出していきます。「劇(play)とは遊び(play)だ、自分の純粋な気持ちに正直になっていいんだ」と。

実は、バリは幼い頃に兄を失っていました。しかし、兄はネバーランドへ行ったのだと自分に言い聞かせ、そこでは誰も年を取らないのだと空想していました。バリはこの空想の世界をもとに『ピーターパン』の物語の創作に取り掛かるのでした。

ところが、当時のロンドンでは上流社会向けの作品が好まれ、子供向けのファンタジー作品は売れないとプロデューサーの猛反対に遭います。悩むバリの前に、空想の中のフック船長が現れ、「強くなって自分自身の物語を書く勇気を持て」と語りかけます。フック船長の言葉に頷くバリの頭の中に次々とインスピレーションが沸きあがっていきます。

そしてどうにかこぎつけた『ピーターパン』の公演初日。無惨にもピーターと兄弟たちを新たな悲しみが襲います。そのときピーターがみつけたものとは......。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

[続き]信じれば、空だって飛べる!大人の人にこそ観て欲しい永遠のファンタジー
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