(C)2015 MIKE AND MARTY PRODUCTIONS LLC.ALL Rights Reserved.
全米を牛耳る巨大製薬会社。世間ではその薬害も報じられていたが、被害者弁護団は証拠をつかめずにいた。野心家の若手弁護士ベン・ケイヒル(ジョシュ・デュアメル)は、金髪美女の元彼女から機密ファイルを受け取り、予想外の展開に巻き込まれていく──。
「トランスフォーマー」シリーズのデュアメル主演のサスペンス映画だ。共演に「羊たちの沈黙」(91)のアンソニー・ホプキンス、「ゴッド・ファーザー」シリーズのアル・パチーノ、「G.I.ジョー」(09)のイ・ビョンホン。ホプキンスとパチーノは初共演。監督は「THE JUON 呪怨」(04)共同製作者のシンタロウ・シモサワ。テレビドラマの脚本を多く手がけ、今回が監督デビュー作となる。
独特の余韻を残して幕を下ろした
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いわゆる"巻き込まれ型サスペンス"。物語の入り口はオーソドックスだが、既婚のケイヒルが元彼女エミリーとSNSでつながり、再会して予想外の方向へ展開する。エミリーは疑惑の巨大製薬会社のCEO(最高経営責任者)、デニング(ホプキンス)の交際相手だった。美しいエミリーに「不正の証拠を収めたファイルを渡す」と言われ、ケイヒルは誘惑に負けてしまう。
弁護士として名を挙げたい一心のケイヒル。ファイルを手に入れた後、弁護士事務所オーナーのエイブラムス(パチーノ)に「製薬会社を訴えたい」と求めて了承される。しかし、訴訟の準備に入ったものの、予想外の事件が起きて歯車が狂い始める。
主人公が妖艶な美女のわなに落ちる筋書き。ヒッチコックの「巻き込まれ型サスペンス」の流れをくんでいる。さらにエロチックな要素を絡めた点は、ブライアン・デ・パルマ作品にも通じる。どこか冷めたケイヒル夫妻の関係、全体に冷たい画面はデビッド・フィンチャーの香りか。
ケイヒルを襲う謎のアジア人役にイ・ビョンホン。「ターミネーター 新起動 ジェニシス」(15)で未来から来た殺人マシンを演じて以降、ハリウッドでは殺し屋のイメージが定着してしまった。
"巻き込まれ型"としてはよくできているが、着地点がなし崩し的で惜しい。しかし、大オチにひとひねり加えて体勢を整え、独特の余韻を残して幕を下ろした。名作をうまく噛み砕き、吸収したシモサワ監督。次回作にも期待したい。
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「ブラック・ファイル 野心の代償」(2016年、米国)
監督:シンタロウ・シモサワ
出演:ジョシュ・デュアメル、アンソニー・ホプキンス、アル・パチーノ、イ・ビョンホン、アリス・イブ
2017年1月7日(土)、新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。