行定勲監督、板尾創路
韓国の第21回釜山国際映画祭が、釜山市で開催中だ。台風一過の秋晴れとなった初日の10月6日は、国内外のゲストがレッドカーペットに登場。詰めかけたファンを熱狂させた。2年にわたり表現の自由をめぐって映画祭側と釜山市が対立し、一時は開催すら危ぶまれたが、組織改編を行うなどしてなんとか初日を迎えた。15日まで69か国・地域の計299本を上映する。
沈没事故に対する政府の対応を批判
オープニング会場の「映画の殿堂」には多くの市民が訪れ、次々に姿を見せるスターに声援を送った。開会セレモニーの司会を務めたハン・ヒョジュとソル・ギョング、新作「THE NET」を上映するキム・ギドク監督、「コーヒーメイト」で共演したオ・ジホとユン・ジンソらが登場。日本勢は「怒り」の李相日監督と渡辺謙、日活のロマンポルノ・リブート・プロジェクト作品「ジムノペディに乱れる」の行定勲監督と板尾創路らキャストが参加した。
黒木瞳
オープニング作品は、中国朝鮮族のチャン・リュル(張律)監督が韓国で撮影した「春夢」。小さな酒場を経営する女性(ハン・イェリ)と、社会の底辺で生きる3人の男の心の交流を描く。3人の男を演じるのは「息もできない」のヤン・イクチュン監督、「ムサン日記 白い犬」のパク・ジョンボム監督、「許されざるもの」、「群盗 民乱の時代」のユン・ジョンビン監督。キャスティングのユニークさも話題を呼んだ。
釜山映画祭は14年、旅客船セウォル号の沈没事故に対する政府の対応を批判したドキュメンタリー「ダイビング・ベル」の上映をめぐり、釜山市と対立。韓国の映画人は表現の自由と映画祭の独立性を訴え、海外の映画界からもエールが送られた。
映画祭側と釜山市側の交渉はなかなか妥協線を見いだせなかったが、女優のカン・スヨン執行委員長に加え、「釜山映画祭の父」と呼ばれるキム・ドンホ元執行委員長を新たに理事長に据えて開催への道筋をつけた。
今年の映画祭は例年並みの規模で行われることになったが、この決着に納得しない映画人も多く、火種は残ったままだ。アジア最大級に成長した映画祭をどう維持していくか、試行錯誤はまだ続きそうだ。
記事提供:映画の森
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