出雲あきらの演劇Life
トニー賞授賞式に22回出席している唯一の日本人、出雲あきら氏が今注目のお芝居を紹介。演劇評論家でありながら現役広告マンでもある出雲氏独自の視点で、ビギナーさんにもぴったりな1本を紹介します。
2016/7/28

【第46回】超人気劇団「柿喰う客」の女体シェイクスピアシリーズ最新作が登場

「世界で最も偉大な劇作家は――?」と聞かれれば、誰もがウィリアム・シェイクスピアの名前をあげるでしょう。『ハムレット』『マクベス』『オセロ』『リア王』『ロミオとジュリエット』『ヴェニスの商人』をはじめ、多くの傑作を世に送り出し、400年経った今でも世界中で上演され続けています。

シェイクスピアが活躍したルネサンス期は、女性が舞台に上がることは許されず、女性の役も男性が演じていました。現代では、女優も参加して上演されていますが、まれに、シェイクピアの時代を再現しようと男性だけで演じる企画が行われることがあります。日本においても故蜷川幸雄がオールメールシリーズと題して男優だけで上演したり、元々男性だけである劇団スタジオライフがシェイクスピア作品を積極的に取り上げたりしています。

柿喰う客 女体シェイクスピア008『艶情☆夏の夜の夢』

ところが、シェイクスピアの時代には出演が禁止されていた「女優」にスポットをあて、女優の持つ無限の可能性を引き出すためにあえて女優のみで演じる「女体シェイクスピア」シリーズを立ち上げた劇団があります。人気演出家、中屋敷法仁が率いる劇団「柿喰う客」です。

独特の作風が特徴の劇団

「柿喰う客」は2004年に中屋敷が青山学院大学在学中に立ち上げた演劇集団で、2006年に正式な劇団となり、今年で結成10周年というまだまだ若い劇団です。基本的には中屋敷の演出作品を上演する劇団で、"妄想エンターテインメント"と呼ばれる独特な作風が特徴です。演劇の虚構性、いわば現実の生活とはかけ離れた作り物としての演劇性を重視し、圧倒的なフィクションの世界が展開されます。そして、スピード感のある台詞回しに乗って展開する物語が、凝りに凝った照明を駆使して斬新かつスタイリッシュに仕上げられた舞台空間に繰り広げられます。

劇団には、NHK大河ドラマ『真田丸』で織田信忠役を演じて注目された玉置玲央をはじめとする芸達者な男優たちも所属していますが、女優陣が実に個性的なため、女体シェイクスピアシリーズが企画されたのではないでしょうか。

第1作は2011年の『悩殺ハムレット』で、中屋敷の手による新解釈に観客達は度肝を抜かれました。その後、『絶頂マクベス』『発情ジュリアス・シーザー』『失禁リア王』など、タイトルも実にユニークな7作品が上演され大好評を博してきました。

そして、最新作は『夏の夜の夢』をベースに、現代日本を背景にした『艶情☆夏の夜の夢』。妖精パックが狂言回しとして登場することをはじめ、シェイクスピア作品の中でも最も虚構性の高い作品なので、中屋敷の演出が冴え渡るに違いありません。また、昨年行われたオーディションによって、若くて個性的な女優が新たに劇団員として加わったこともあり、シリーズ最高傑作が生まれる予感がします。

柿喰う客の公演は通常1時間半前後というほどよい上演時間で、終演後に約20分のトークショーが連日付きます。また、今回音楽を担当するDE DE MOUSEが終演後に演奏を行う「艶情☆ナイト」を8月6日と20日に開催する予定で、アフターイベントも充実しています。

また、入場料金は、最前列の限定10席のみレアなグッズがもらえる極楽席をはじめ、学生割引、高校生割引に加えて、3人以上で購入すると適用されるなかよし割など、様々な料金体系があるので、ホームページ等で確認するといいと思います。

劇団創設10周年を迎え、ますます斬新な作品を世に送り出す「柿喰う客」に目が離せません。是非、劇場まで足を運んでみてください。


柿喰う客 女体シェイクスピア008『艶情☆夏の夜の夢』

東京公演 8月4日(木)~8月14日(日)吉祥寺シアター
大阪公演 8月18日(木)~8月21日(日)ナレッジシアター

原作:W.シェイクスピア
脚色・演出:中屋敷法仁
音楽:DE DE MOUSE
振付:KAORIalive(Memorable Moment)
出演:岡本あずさ、七味まゆ味、深谷由梨香、葉丸あすか、長尾有里花、福井夏、
岡田あがき、千葉雅子
作品の詳細は公式サイトで。

出雲 あきら 出雲 あきら(いずも・あきら)

演劇評論家。ラジオや雑誌等で多くの演劇コーナーを担当。トニー賞授賞式に20年出席している唯一の日本人。広告会社電通に勤務する会社員でもある。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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